研究の概要

現行の前日電力オークションは再エネ発電事業者に「翌日の発電量」を前日に確定コミットさせる設計になっている。しかし風力・太陽光は天候に依存するため、この設計が系統全体での非効率を生み出している。本研究はミクロ経済学の「不確実性下の均衡」理論を応用し、電力契約に「場所・時刻」だけでなく「世界状態(例:風が強い日か弱い日か)」を条件として組み込む「状態条件付き電力契約(state-contingent contracts)」の設計フレームワークを提案した。北海の洋上風力を対象としたケーススタディで実用性を検証している。

主な発見・成果

  • 状態条件の適切な定義が「無限に存在する状態分割」の中から最適な分割を選ぶ問題(optimal partitioning problem)と等価であることを数学的に示した。
  • 発電事業者が天候状態を直接市場に開示できる仕組みにより、予備力・バランシング市場への不必要なしわ寄せが削減される。
  • 北海洋上風力のケーススタディで実務的な状態定義の具体例を提示し、既存市場設計との接続可能性を示した。
  • 再エネ比率が高まるほど従来型オークション設計の限界が顕在化するという構造的問題を整理した。

実務への応用

日本でも再エネ比率上昇に伴い、前日市場・当日市場・需給調整市場の連携設計が課題になっている。本研究が示す「状態条件付き契約」の概念は、気象予測データを価格形成に内生化することで、再エネ事業者の収益安定性と系統全体のバランシングコスト削減を同時に達成する市場制度改革の方向性を示している。電力市場改革・容量市場設計に携わる政策立案者・シンクタンク・再エネ事業者にとって、理論的基礎として参照価値が高い。コーポレートPPA価格設計にも天候状態の組み込み方という観点で応用できる。