やったこと
東京ガスは系統用蓄電池事業に本格参入してから約2年で累計95.5万kWのプロジェクトパイプラインを積み上げ、当初の2030年度目標(100万kW)を前倒し達成した。新目標として2030年代初頭に200万kWを設定し上方修正。青森県八戸市(9.9万kW)・十和田市(5万kW)の2施設が長期脱炭素電源オークション(LTDA)で選定されており、2029年度商業運転開始に向けて建設を進めている。
具体的な手順・工夫
LTDAを活用した安定収益の確保
系統用蓄電池事業の収益基盤として、経済産業省の「長期脱炭素電源オークション(LTDA)」への入札・選定を核に据えた。LTDAに選定されると20年間の容量収入(固定収入)が確保されるため、初期投資の回収見通しが立てやすくなる。これに卸電力市場や需給調整市場での変動収益を組み合わせる「複合収益モデル」を採用することで、投資IRRをさらに改善している。
Developer/Operator分離モデルによる高速展開
青森2施設ではHoder Energy Technology Japan(HDRE)が開発・建設(Developer)を担当し、運転開始後に東京ガスが運営(Operator)を引き継ぐ「Developer/Operator分離モデル」を採用。東京ガスは自社でEPC・開発を担わない代わりに、専業Developerとの協業により短期間で大量のプロジェクトを推進できる体制を構築した。
規模別ポートフォリオ設計
青森八戸(9.9万kW)・十和田(5万kW)という2サイズを同時展開。LTDAの入札では容量単価(円/kW)で競争するため、規模が大きいほどスケールメリットで有利になる一方、5万kW級も「費用対効果の高い応札価格」が実現できる規模帯と判断された。合計14.9万kWを単一事業者のポートフォリオとして管理することで、需給調整市場での応答能力も向上する。
既存アセットとの相乗効果
東京ガスは都市ガス・LNG・発電所のネットワークと送配電事業者との既存関係を活用し、蓄電池サイト選定・系統接続交渉を効率化。エネルギー事業者が新規参入する際に「既存の系統・電力市場の知見」を転用できる典型例である。
得られた結果
- 累計プロジェクトパイプライン:95.5万kW(本格参入約2年)
- 新目標:200万kW(2030年代初頭)
- 直近選定案件:青森八戸9.9万kW・十和田5万kW(LTDA選定、2029年度商業運転)
- 収益構造:LTDA容量収入(20年固定)+卸市場+需給調整市場
他社が参考にすべき点
- LTDAの活用が参入の鍵:日本政府の長期脱炭素電源オークションに選定されることで20年間の容量収入が確保される。系統用蓄電池事業への参入を検討する事業者はLTDAのスケジュールと入札要件を事前に把握しておくことが不可欠。
- Developer/Operator分離による効率化:自社でEPC・開発を担わず専業Developerと組むことで、2年で100万kWという急速な規模拡大が実現できた。電力会社・ガス会社・商社が蓄電池ビジネスに参入する際に有効な体制設計モデル。
- 複合収益設計の重要性:LTDA容量収入だけでなく、需給調整市場(三次調整力等)との組み合わせで投資回収を加速できる。蓄電池事業計画ではLTDA+市場収益の両面シミュレーションが必須。
- 規模感の参考:5万kW級(小)・9.9万kW級(中)の2スケールが現実的なLTDA応札単位。蓄電池1kWあたりの設備コスト・運営コストの低下が続いており、今後の参入機会は拡大する見込み。