やったこと
再生可能エネルギー事業者のレノバ(東京都千代田区)は2026年4月、島根県安来市に出力2MWの「安来蓄電所」の運転を開始した。この蓄電所の最大の特徴は、電力取引市場での運用機能を同社が「初めて自社で内製化した」点にある。従来は外部委託が一般的だった電力市場への応札・充放電計画策定・充放電指令管理を自社エンジニアが一気通貫で担う体制を構築した。
具体的な手順・工夫
内製化した3つの機能
レノバが内製化したのは以下の3機能:
- 市場価格予測に基づいた充放電戦略の立案:電力スポット市場・需給調整市場の価格予測モデルを自社構築し、最適な充放電スケジュールを策定する
- 電力市場への応札業務:一般送配電事業者が運営する需給調整市場への入札を自社で実施。調整力(一次・二次調整力等)として応札することで、容量収益と調整力収益の両方を自社に取り込む
- 充放電指令の実行管理:応札が約定した場合の実際の充放電制御指令をリアルタイムで実行・管理する
内製化のメリット
外部委託の場合、市場運用費用として収益の一定割合を委託先に支払う必要がある。内製化によりこのコストがなくなるだけでなく、自社の市場予測ノウハウが蓄積され、将来の大規模蓄電所運用に活かせる技術資産となる。
2MWを「学習プロジェクト」と位置づけ
安来蓄電所の2MWは商業規模としては比較的小さい。レノバは本プロジェクトを「今後計画する国内最大級蓄電プロジェクト成功のための重要拠点」と位置づけており、小規模での内製化体制構築→大規模展開という段階的アプローチを採っている。
得られた結果
- 運転開始:2026年4月
- 設備仕様:出力2MW、系統直接接続型(島根県安来市)
- 内製化機能:充放電戦略策定・市場応札・充放電指令管理の3機能
- 位置づけ:将来の国内最大級蓄電プロジェクトのための先行実証拠点
他社が参考にすべき点
- 系統用蓄電池の収益最大化には市場運用の内製化が有効:外部委託モデルは運用ノウハウが社内に蓄積されない。電力市場への参加ノウハウを内製化することで収益率と技術資産の両方を向上できる。
- 小規模蓄電所を「PoC(実証実験)」として先行稼働させる戦略:2MW規模でも内製化体制・運用プロセス・市場応札ロジックを確立できれば、大規模化時の立ち上げコスト・リスクを大幅に低減できる。
- 需給調整市場参入には充放電制御・市場予測・応札の3機能セットが必要:この3つを外部委託から内製化に切り替えるには、それぞれの専門人材(電力取引ディーラー・制御エンジニア・データサイエンティスト)が必要になる点が移行の障壁。
- 再エネ事業者が蓄電池事業に参入する場合の先行モデル:太陽光・風力発電を主力とする事業者が蓄電池の調整力収益を自社に取り込む際の、内製化アプローチの参照事例。