研究の概要

再生可能エネルギー(再エネ)の大量導入に伴い、従来の同期発電機(SG)と系統連系型インバータベースリソース(IBR:太陽光・風力など)が混在する電力系統で生じる過渡安定性の新たな問題を分析した研究。従来の「第1スイング不安定性(単発的な加速エネルギーの蓄積による脱調)」とは異なる「多スイング不安定性」のメカニズムを初めて明らかにしている。

楊松豪・李炳芳ら中国の研究グループによる研究。arXiv (eess.SY)掲載。

主な発見・成果

  • 多スイング不安定性の発見:低電圧ライドスルー(LVRT)制御と回復制御から生じる減速エネルギーの蓄積が、後続の電力動揺において加速エネルギーへと変換される。これにより、第1スイングでは安定を保つが複数スイングの繰り返しの中で脱調するという新しい不安定パターンが生じる。
  • 再エネ統合比率の増加に伴うリスク:再エネの統合比率が高まるほど、この多スイング不安定性のリスクが増大することを理論解析と数値シミュレーションで確認した。
  • 従来手法の限界:既存の過渡安定性評価手法(エネルギー関数法など)は第1スイングを主対象としており、多スイング不安定性を適切に評価できないことを示した。

実務への応用

日本でも2030年度の再エネ比率36〜38%目標に向けて急速な導入拡大が進んでいる。電力系統の安定性評価を担う電力会社・系統運用者・電力システム設計者にとって、本研究が示す多スイング不安定性は既存の安定性評価プロトコルの見直しを迫る重要な知見である。特に大容量の太陽光・風力が集中する地域の系統では、従来の安定性評価ツールだけでは不十分な可能性がある。系統計画・設備認定基準の改訂における技術的根拠として参照すべき研究といえる。