実装のポイント
持続可能な航空燃料(SAF)のうち、バイオマスや廃棄物をガス化・液体燃料化する「e-fuel型SAF」の製造には、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成が中核となる。従来のFT合成プロセスでは、製品中にSAFに適した液体炭化水素(C5〜C20の炭化水素)が25%程度しか含まれず、残りは水素化分解(hydrocracking)工程によってSAF範囲に変換する必要があった。JFEエンジニアリングと富山大学は、この水素化分解を不要にする新触媒を開発し、FT合成だけでSAF収率を50%超に引き上げることに成功した。
具体的な手順
従来プロセスの問題点
FT合成後、SAF適合範囲(C8〜C16)の液体炭化水素収率は約25%にとどまる。残りはより長鎖の重質炭化水素(ワックス)であり、これをSAFに変換するには水素化分解設備(別途投資・エネルギー消費)が必要だった。プロセスが2段階になることで設備コストと製造コストが膨らみ、SAFの経済的な普及を阻む要因となっていた。
新触媒の設計原理
富山大学・椿範立教授の研究をベースにJFEエンジニアリングが開発した触媒は、FT反応の炭素鎖長分布(Anderson–Schulz–Flory分布)をSAF適合範囲(C8〜C16)に集中させるよう設計されている。
- FT合成段階で直接SAF範囲の液体炭化水素を選択的に生成
- 水素化分解工程が不要になりプロセスが1段階に簡略化
- 副生物のワックス割合が大幅減少
製造フロー(簡略版)
- バイオマス・廃棄物をガス化 → 合成ガス(CO+H2)生成
- 新触媒によるFT合成 → SAF適合炭化水素を50%超の収率で直接生成
- 精製・仕上げ → 航空燃料規格(ASTM D7566等)に適合させて出荷
得られた結果
- SAF収率:25%程度 → 50%以上(従来比2倍超改善)
- 水素化分解設備が不要になりプラント構成が簡素化
- 設備投資コスト・運転コスト両面での削減効果が見込まれる
- 航空分野の脱炭素化加速に向け、国内SAFプラントへの展開を目指す