研究の概要

欧州では再生可能エネルギーへの急速な移行が進んでいるが、この脱炭素化プロセスは電力グリッドの安定性に新たなリスクをもたらしている。熱発電所の廃止により系統慣性(イナーシャ)が低下し、遠距離送電の増加と相まって、カスケード(連鎖)障害のリスクが高まっている。本研究は欧州電力系統の脱炭素化シナリオ別にカスケード障害リスクを定量評価した。

研究チーム(11名)はカーボン削減の進行度別に複数のシナリオを設定し、最も発生確率が高い系統分割と最も深刻な系統分割のそれぞれを特定した。また、どの送電線が系統安定性に最も重要かを分析し、費用対効果の高い対策を提案した。

主な発見・成果

  • 脱炭素化の進展とともに系統分割による電力障害リスクが増大することを定量化
  • 最も確率が高いカスケード障害パターンと最も被害が大きいパターンを特定
  • **「脱炭素化によるリスク増大は費用対効果よく軽減できる」**という重要な政策的知見
  • 追加の系統増強投資なしに既存インフラの運用改善で対応可能な対策を特定
  • 欧州電力系統の脆弱な送電線区間と重要インフラを明確化

実務への応用

エネルギー政策立案者・電力会社・大口需要家の事業継続計画(BCP)担当者にとって、本研究は再エネ大量導入時の電力供給リスクを事前に把握するための根拠を提供する。日本においても洋上風力・太陽光の大量導入に伴う系統安定性の問題は同様に重要であり、欧州の知見は日本の系統計画への示唆を持つ。サプライチェーン上の電力供給リスクを評価するScope 3・操業リスク管理にも参照できる。