実装のポイント

航空会社のScope1排出には、空港での地上業務(グラウンドサポートイクイップメント:GSE)が含まれる。GSEの中でも、航空機をゲートから誘導路・駐機場まで牽引するトーイングトラクターは大型ディーゼル車で、空港内CO2排出の一因となっている。日本航空(JAL)は、2024年に退役したディーゼル式けん引車を廃棄せず改造することで、水素燃料電池トーイングトラクターに転換する国内初の実証を開始した。新車調達コストを抑えた「既存車両の後付け改造」というアプローチが、他の航空会社・空港運営者にとって再現性の高いモデルとなる。

具体的な手順

機材の改造内容

  • ベース車両: 2024年退役のディーゼル式航空機用トーイングトラクター
  • 追加設備: 水素タンク+燃料電池ユニットを後付けで搭載
  • 動力変換: 燃料電池(水素+酸素の電気化学反応)で発電し、電気モーターで駆動
  • メリット: 既存のけん引機構はそのまま活用、動力系統のみゼロエミッション化

運用方法

  • 充填場所: 羽田空港近くのJAL専用施設内に水素充填設備を設置
  • 充填頻度: 週1回程度の充填で継続運用可能
  • 対象業務: 航空機けん引(ゲートからのプッシュバック、格納庫間のトーイング等)

展開のポイント

電気自動車(EV)方式との比較では、燃料電池方式は「充填時間が短く(数分程度)、航続距離が長い」という優位性がある。大型けん引車のように頻繁かつ連続使用が求められる用途では、EV充電待ち時間の制約が少ない燃料電池方式が適している。

得られた結果

  • CO2削減見込み: 年間約2.6トンのCO2削減(本実証機1台あたり)
  • 国内初の水素燃料電池トーイングトラクター実証
  • 既存車両改造という低コストアプローチで早期・段階的な展開が可能
  • 将来的に空港内GSE全体の水素化・電動化ロードマップへの展開が期待される