研究の概要

ビルとデータセンターが一体となった統合エネルギーシステム(IES)の運用最適化において、従来の「予測してから最適化する」2段階アプローチに代わる、エンドツーエンド学習手法を提案した研究です。電力・熱・冷却などの多様なエネルギーを協調制御しながら、データセンターからの廃熱をビル側で有効活用するモデルを構築しています。

著者らは、不確実な変数(太陽光発電量・冷暖房負荷など)の予測モデルのトレーニングと、制約付き最適化を統一された学習フレームワークに統合することで、予測精度ではなく実際の運用目標(エネルギーコスト最小化)に直結した予測を実現しました。物理的制約を満たしながら複数のエネルギーキャリア間の最適配分を学習する点が新しい。

主な発見・成果

  • 既存の「予測してから最適化」手法と比較して、約7〜9%の性能改善を達成
  • データセンター廃熱回収単体でもエネルギーコストを約10%削減
  • エンドツーエンド学習により、予測誤差がそのまま運用コスト悪化につながる従来手法の弱点を克服
  • 再生可能エネルギー(太陽光)の不確実性下でも安定した最適化が可能
  • 実際のビル・データセンター複合施設を想定したシミュレーションで有効性を確認

実務への応用

データセンターとオフィスビルが隣接または同一拠点に存在する企業のエネルギー担当者にとって、直接応用可能な成果です。サーバーの冷却に使った熱をビルの暖房や給湯に転用するシステム(廃熱回収)を導入する際、AIベースの運用最適化を組み合わせることでコスト削減効果を最大化できます。従来の独立制御から統合制御への移行を検討しているDX・GX推進担当者は、このアプローチを参考に運用システムのアーキテクチャ設計に活かせます。また、再エネの変動性をAIで吸収しながらコスト最適化するアプローチは、工場や物流施設など他の業態にも展開可能です。