やったこと
鹿島建設は愛媛県大洲市の山鳥坂ダム仮排水トンネル工事(国土交通省直轄)において、異なるメカニズムを持つ環境配慮型コンクリート2種類を同一現場で初めて大規模に併用した。1つは高炉スラグを活用した低炭素型「ECMコンクリート」、もう1つは炭酸化養生でCO2を吸収・固定するカーボンネガティブ型「CO2-SUICOM埋設型枠」である。
具体的な手順・工夫
ECMコンクリート(低炭素型)の適用
- 使用量:912.4m³(工事全体の約32%)
- 手法:従来の普通ポルトランドセメントに代えて「ECMセメント」を採用。高炉スラグ微粉末を60〜70%混合することで、製造時のGHG排出量を約65%削減
- 調達:高炉スラグは鉄鋼製造の副産物であり、既存の産業廃棄物サプライチェーンを活用できるため追加コスト・入手性のハードルが低い
CO2-SUICOM埋設型枠(炭素固定化・吸収型)の適用
- 使用量:163.8m²(全区間の約70%)
- 手法:セメントの一部を産業副産物(フライアッシュ等)や特殊混和材「γ-C2S(ガンマ-ダイカルシウムシリケート)」に置き換え、炭酸化養生工程でコンクリート硬化時にCO2を物理的に吸収・固定化
- カーボンネガティブ達成:製造時CO2排出量215 kg/m³に対し、炭素固定量229 kg/m³を達成。差し引きでカーボンネガティブ(純吸収)を実現
2種類の組み合わせ戦略
打設コンクリート(構造体)にはECMコンクリート、トンネル底盤(インバート)の型枠部分にはCO2-SUICOMを配置するなど、部位の特性に応じて技術を使い分けた。単一技術での最大化ではなく、メカニズムの異なる2技術を補完的に組み合わせることで、より広い範囲をカバーした。
得られた結果
- インバート全体のGHG排出量を従来比で約12%削減
- CO2-SUICOMでは製造時排出量を上回る炭素固定を達成し、カーボンネガティブを実証
- 国土交通省直轄工事での2種類同時大量適用は国内初の事例
他社が参考にすべき点
- 部位別の技術選択:「型枠部分」と「打設コンクリート本体」でそれぞれ最適な環境配慮技術を選べる。一括採用ではなく部位分割での段階的導入が現実的
- 産業副産物の活用:高炉スラグ・フライアッシュはいずれも既存の産業副産物であり、新規原料調達不要。サプライチェーン変更リスクが低い
- 公共工事での実績形成:国交省直轄工事での大規模採用実績は、将来的な標準仕様化・横展開の根拠になる。土木系ゼネコンが類似工事で採用を検討する際の具体的根拠として活用可能
- 12%削減の現実的な数字:個別技術単体での高削減率(65%等)と、現場全体での削減率(12%)を区別して把握することが重要。全体数字での評価が発注者・施主への説明には適している