実装のポイント
バーチャルPPA(Virtual Power Purchase Agreement:仮想電力購入契約)は、需要家が実際の電力供給を受けずに、再生可能エネルギー発電所が生み出す「環境価値」のみを購入する仕組みである。物理的な電力は引き続き系統から調達するため、発電所と工場が地理的に離れていても成立する点が最大の特徴だ。コスモエコパワー株式会社(コスモエネルギーHD傘下)と富士電機株式会社は2026年4月に締結し、静岡県掛川市の遠州風力発電所(設備容量6,330kW)から生み出される年間約1,000万kWhの環境価値を、富士電機の松本工場(パワー半導体製造拠点、長野県)のScope2削減に充当する。
具体的な手順
ステップ1:需要家の年間電力量・再エネ目標を確認
まず自社工場の年間電力消費量(kWh)を把握し、GHGプロトコルのMarket-based アプローチで達成したい再エネ比率を設定する。富士電機は全社再エネ比率を2030年度に55%まで引き上げる目標(2024年度実績:9%)を掲げており、バーチャルPPAはその主要施策と位置付けた。
ステップ2:発電事業者との交渉・契約
再エネ発電事業者(本件ではコスモエコパワー)と、購入する環境価値量・期間・電源種別を交渉して契約を締結する。非FIT電源(本件:風力)から発行される非化石証書(RE電源属性証書)が需要家に移転される形が一般的。本件では6,330kW(2基:各4,220kW規模)の風力発電所が2027年度上半期に稼働予定であり、稼働前からの契約締結が調達確実性を高める。
ステップ3:環境価値の移転とScope2への算入
発電量に応じて発行された非化石証書を受け取り、GHGプロトコルに則ってScope2排出量をゼロとして算定する。RE100・SBTi目標の達成状況の報告にも反映できる。
CO2削減量の算定方法
- 年間環境価値:約1,000万kWh
- 電力排出係数(2024年度:約0.43kg-CO2/kWh)
- 年間削減量:約4,210t-CO2(約1,700世帯分相当)
得られた結果
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 発電所 | 遠州風力発電所(静岡県掛川市) |
| 設備容量 | 6,330kW(2基) |
| 年間環境価値 | 約1,000万kWh |
| 年間CO2削減量 | 約4,210t |
| 稼働開始予定 | 2027年度上半期 |
| 需要家 | 富士電機 松本工場(パワー半導体製造) |
コスモエコパワーはJR西日本への初バーチャルPPA(中紀ウィンドファームを活用)も実施しており、製造業・交通インフラなど立地を問わず再エネ調達できるスキームとして活用実績が積み上がっている。自家消費型太陽光や系統PPAと組み合わせることで、Scope2の段階的削減ロードマップを構築できる。