やったこと
大和製罐は2026年4月1日より、神奈川県相模原市の東京工場において、東京電力エナジーパートナー(東電EP)と九電みらいエナジーが組成したオフサイトフィジカルコーポレートPPA(電力購入契約)を通じて再生可能エネルギーの調達を開始した。電源には大分県・鹿児島県の地熱発電所4カ所(総出力197,500kW)を活用し、5年間の契約で年間約6,100tのCO2削減を実現する見込みだ。
具体的な手順・工夫
スキームの概要
オフサイトフィジカルコーポレートPPAとは、需要家(企業)が発電事業者と直接電力購入契約を結び、一般送配電ネットワーク経由で再エネ電力を調達する仕組みである。電力の物理的な流通(フィジカル)を伴うため、再エネ属性証明(環境価値)と実際の電力供給が一体化している点が、非化石証書購入モデルとの大きな違いだ。
電源選定の理由
九電みらいエナジーが大分県と鹿児島県に保有する地熱発電所4カ所を電源として選定した。地熱発電は天候に左右されない安定した出力が特長で、製造ラインのように24時間稼働する工場のベース電源として適している。太陽光など変動電源と異なり、昼夜を問わず安定した再エネ供給が見込める。
スキームの構造
- 発電:九電みらいエナジーが大分・鹿児島の地熱発電所で発電
- 送電:東電EPが既存の一般送配電ネットワークを通じて相模原市の東京工場に届ける
- 契約:大和製罐が需要家として東電EPと直接PPAを締結、5年間の固定価格で調達
東電EP(首都圏の電力小売大手)が北部九州の地熱発電と首都圏需要家をつなぐ役割を担うことで、地理的なミスマッチを解消した。
工場側の対応
東京工場は缶詰・製缶製造を行う製造拠点であり、既存の受電設備をそのまま活用できる。工場内の改修工事は不要で、契約切り替えだけで再エネ調達を実現できた。
既存PPAとの組み合わせ
大和製罐は2024年8月に清水工場でも太陽光オフサイトPPAを導入済み(中部電力ミライズと契約、年間約2,300MWh・CO2約1,000t削減)。今回の地熱PPAはその拡大版に当たる。段階的に工場ごとにPPAを導入し、サプライチェーン全体の脱炭素化を進めるアプローチを取っている。
得られた結果
- 東京工場における年間CO2削減量:約6,100t(2026年4月1日より)
- 契約期間:5年間(2026〜2030年度)
- 対象電源:地熱発電所4カ所(総出力197,500kW、大分県2カ所・鹿児島県2カ所)
- スキーム:オフサイトフィジカルコーポレートPPA
他社が参考にすべき点
- 製造業での地熱PPAの活用:太陽光・風力が変動するのに対し、地熱は24時間安定出力が特長。製缶・金属加工・食品など24時間操業の工場のベース電源として検討価値が高い。
- 東西の電力会社が連携するモデル:首都圏の東電EPと九州の九電みらいエナジーが協業することで、地理的に遠い再エネ電源を首都圏需要家が調達できる事例。地域をまたいだフィジカルPPAの可能性を示した。
- 工場単位での段階的展開:一気に全工場を切り替えるのではなく、工場ごとに順次PPAを導入する手法は、リスクを抑えながら再エネ比率を高める現実的なアプローチ。
- Scope2削減の即効性:フィジカルPPAにより電力起源のScope2排出量を大幅に削減でき、GHGインベントリの改善効果が迅速に現れる。