実装のポイント
SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)は、廃食油・農業残渣・合成燃料などを原料とする次世代航空燃料であり、ライフサイクル全体でのCO2排出量を従来ジェット燃料比で最大80%削減できる。現在の主流製造技術はHEFA法(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)で、廃食油(UCO:Used Cooking Oil)を水素と反応させてSAFを製造する。既存の航空機エンジンおよび給油インフラをそのまま活用できる「ドロップイン燃料」である点が普及上の最大の利点だ。
日本政府は2030年に本邦エアラインの燃料使用量の10%(約170万kL)をSAFに置き換える目標を設定しており、「エネルギー供給構造高度化法」改正によって石油元売り大手へのSAF供給義務付けが進行中である。
具体的な手順
ステップ1:原料(廃食油)の調達スキームを構築する
廃食油(UCO)は家庭・外食産業から回収する。コスモエネルギーHDは都内ガソリンスタンドでの家庭系廃油回収を実施し、自社製油所(大阪・堺)に集約している。廃油回収ルートの確保が製造コスト管理の鍵であり、食品メーカー・外食チェーンとの長期調達契約が有効。
ステップ2:HEFA法による製造設備を導入する
廃食油を**水素化処理(ハイドロプロセシング)**にかけて脂肪酸エステルを飽和炭化水素(パラフィン)に転換し、蒸留してSAFを分離する。製油所内の既存水素化脱硫装置を転用または改造できるケースもある。主な国内先行事例:
- コスモエネルギーHD:堺製油所で年産3万kLのSAF量産設備を2025年春に稼働
- ENEOSホールディングス:和歌山製造所に年産40万kL規模のプラントを建設、2026年稼働予定
- 出光興産・富士石油・太陽石油も計画発表済み(国内供給見込み計約192万kL)
ステップ3:コスト構造と「グリーンプレミアム」を把握する
SAFの製造コストは従来ジェット燃料(約100円/L)の2〜5倍。10%混合義務化時には旅客運賃にグリーンプレミアムが転嫁される見込みで、航空会社のスコープ1削減コストとして織り込みが必要。
次世代技術:e-fuel(2030年代以降)
再エネ電力と大気中のCO2を原料とする合成燃料「e-fuel」が2030年代以降に登場予定。製造コストは300〜700円/Lと高コストだが、廃食油の原料制約から解放され、資源エネルギー庁の2050年ロードマップでは全SAFの約半分がe-fuelに移行する見込み。
得られた結果
| 指標 | 数値・内容 |
|---|---|
| CO2削減率(ライフサイクル) | 最大80%(従来ジェット燃料比) |
| 主流製造技術 | HEFA法(廃食油→水素化処理) |
| 製造コスト | 従来燃料の2〜5倍(約200〜500円/L) |
| 国内供給目標 | 170万kL(2030年、燃料使用量の10%) |
| 国内供給見込み量 | 約192万kL(各社計画合計、2024年時点) |
| 法的根拠 | エネルギー供給構造高度化法改正(供給義務付け) |
SAF調達はScope1削減手段として航空会社・貨物輸送企業のみならず、サプライチェーン上の荷主企業のScope3(カテゴリ11:販売製品の使用)削減にも活用できる。CORSIA(国際民間航空機関のオフセット制度)対応としても有効であり、2030年義務化に先立つ自主調達の実績づくりが競争優位につながる。