やったこと

CHC Japan(系統用蓄電所開発)・みずほ証券・オリックス銀行の3者が、新潟県小千谷市に建設する出力49MWの系統用蓄電所向けに、総額100億円のプロジェクトボンドを組成した。系統用蓄電所の開発資金を使途とするプロジェクトボンドは国内初。最大の特徴は「着工時点で全額を確保する」ストラクチャーで、長期化する系統連系手続きに伴うキャピタルリサイクル問題を解消した。東京ガスが商業運転開始後20年間の電力引き取りを担うことでオフテイカーリスクも排除し、2029年の運転開始を見込んでいる。

具体的な手順・工夫

3者分業のプロジェクトボンド組成

  • CHC Japan:蓄電所の開発とアセットマネジメント(プロジェクトオーナー)
  • みずほ証券:投資家の招聘を含むボンド組成(アレンジャー)
  • オリックス銀行:信託受託者および信託貸付人(セキュリティ担保)

アレンジャー・トラスティ・貸付人を明確に分離することで、各社の専門性を活かしつつリスクを分散させた。

「着工時調達」が解決する問題

系統用蓄電所の開発では、系統連系申請から接続承諾まで数年を要するケースが増えている。従来のプロジェクトファイナンスは商業運転開始後に資金調達するモデルが主流だが、開発期間中のキャピタルが固定化され、次案件への投資余力が削られる(キャピタルリサイクル問題)。着工時にボンドで資金を確保することで、開発会社は次案件の開発・入札を継続できる。

東京ガスとの20年オフテイク契約

電力購入先として東京ガスと長期契約を締結し、商業運転開始から20年間の安定収入を確保した。これが投資家の信用力評価を高め、ボンド組成を可能にした核心要素。

金利上昇局面への対応

超長期資金(プロジェクトボンド)で固定化することで、金利変動リスクをヘッジ。2026年時点の金利環境でもプロジェクト収益性を確保できる条件でのクローズを実現した。

得られた結果

  • 総調達額:100億円(国内初の系統用蓄電所プロジェクトボンド)
  • 蓄電所規模:出力49MW(新潟県小千谷市)
  • オフテイカー:東京ガス(20年間電力引き取り)
  • 運転開始予定:2029年
  • 効果:着工時調達でキャピタルリサイクルを実現、次案件開発を継続可能

他社が参考にすべき点

  • 着工時プロジェクトボンドは系統連系待機期間のキャピタル固定化を解消する:多数の案件を抱える蓄電所デベロッパーにとって、開発資金のリサイクル速度が競争力の鍵。着工時調達スキームは案件件数を倍増させる可能性がある。
  • 49MW・100億円が国内初の公開参考値:プロジェクトボンド単価は約2億円/MW。類似規模の調達計画に使える試算ベースライン。
  • 長期オフテイク(20年)が投資家の参入条件:大手エネルギー会社との長期PPA締結がプロジェクトボンド組成の前提条件であることを示している。LTDA(長期脱炭素電源オークション)との組み合わせも有力な選択肢。
  • 3者分業(開発者+証券会社+信託銀行)が蓄電所プロジェクトファイナンスの標準モデル候補:今後の系統用蓄電所プロジェクトファイナンスで参照されるアーキテクチャになりうる。