やったこと

大日本印刷(DNP)が従業員1,000人以上の企業を対象にScope3対応の実態調査を実施し、2026年4月に結果を発表した。Scope3算定を実施している企業は全体の48.9%にとどまり、Scope1・2のみに留まる企業が35.0%存在することが判明した。サプライヤー連携で企業が直面する最大の課題として「算定の知見不足」が挙がっており、脱炭素経営推進者がサプライヤーへのアプローチで直面するボトルネックを数値で可視化した。

具体的な手順・工夫

調査から見えるScope3実装の現在地

従業員1,000人以上の大企業に絞っても、Scope3算定を実施している企業は約半数(48.9%)。そのうち「削減目標を設定し進捗管理」まで実施している企業は24.5%に過ぎない。「算定のみで目標未設定」が22.4%存在し、算定しても次の行動に移れないギャップが浮かぶ。

サプライヤー連携の3つの課題構造

記事ではサプライヤー連携の実務上の課題として以下3点を提示している:

  1. 意識醸成:取引先が排出量算定の必要性を認識していない。「なぜ算定が必要か」からの説明が必要。
  2. 要件設定:GHG算定依頼の水準をどこに設定するか。一次サプライヤーにはCat1の一次データ提供を求め、二次以降はSpend-based法+排出係数で代替するという段階的アプローチが現実解。
  3. データ連携:機密性の高い生産量・エネルギーデータの共有をどう設計するか。NDA締結・専用ポータル活用・サードパーティ集計などの手段がある。

脱炭素の動機から見たサプライヤーへの説明ポイント

Scope3対応の動機として「GHG排出の全体最適化」が78.8%と最多であるが、「ESG評価・CDP改善」(51.1%)や「競争力強化」(46.9%)も高い。サプライヤーへの協力依頼時に「取引先からの要請(ESG評価影響)」を明確に伝えることが意識醸成の出発点として有効と読める。

「算定知見不足」への対処パターン

  • サプライヤー向け算定ハンドブック・テンプレート提供(Cat1のスコープ1+2の活動量収集フォーマット共有)
  • 集合研修・個別支援(特に主要20〜30社の一次サプライヤーに絞った集中支援が費用対効果が高い)
  • CDPサプライチェーンプログラム等の外部プラットフォーム活用(自社システム構築コストを削減)

得られた結果(調査概要)

  • Scope3算定実施率:48.9%(従業員1,000人以上の大企業)
  • Scope1・2のみ:35.0%
  • 削減目標設定+進捗管理実施:24.5%
  • 算定のみ・目標未設定:22.4%
  • 脱炭素動機(複数回答):全体最適化78.8% / ESG評価51.1% / 競争力46.9%
  • 最大課題:サプライヤーの「算定の知見不足」

他社が参考にすべき点

  • Scope3算定のBenchmark:大企業でも半数未満しか算定していない。自社がScope3未着手でも「遅れ」ではなく「平均的」な位置。一方、「算定+目標設定+進捗管理」まで実施している企業は24.5%のみで、この状態が「先進企業」として顧客・投資家から評価される水準。
  • サプライヤー連携は「知見提供」から始める:最大課題が「知見不足」であるため、依頼書を送るだけでは動かない。算定テンプレート・研修機会・Q&Aサポートをセットで提供することが成功率を高める。
  • 一次サプライヤー20〜30社に集中投資する:全サプライヤーへの同時展開は現実的でない。Pareto則に従い上位20〜30社への集中支援でScope3 Cat1の80%をカバーする戦略が標準的アプローチ。
  • 「取引先からの要請」がサプライヤーへの最大の動機づけ:脱炭素動機トップが「全体最適化」であることを踏まえると、バリューチェーン全体の排出削減への貢献として意義を訴求する説明が有効。