やったこと

アーキテクト・ディベロッパー(ADI、埼玉県さいたま市)は2026年4月、東京製鐵が製造する低CO₂鋼材「ほぼゼロ」を賃貸住宅の標準仕様に採用した。賃貸住宅デベロッパーとして業界初の取り組みとなる。モデル棟(18世帯)での検証では、躯体製造段階のCO₂排出量を従来比約23.3%削減(67.9t→52.1t)することを確認。年間100棟に適用すると年間約1,580tの削減が見込める。

具体的な手順・工夫

鋼材選定:東京製鐵「ほぼゼロ」の採用

東京製鐵が製造する低CO₂鋼材「ほぼゼロ」は、電炉(電気炉)で鉄スクラップを溶解して製造するため、高炉鋼材に比べてCO₂排出量が大幅に少ない。ADIはこの鋼材を特定案件向けではなく「標準仕様」として採用することで、全案件への一括適用を実現した。

躯体製造段階への焦点化

ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から、建物の「躯体製造段階(A1-A3フェーズ)」に絞って削減効果を測定。18世帯のモデル棟で以下の効果を確認:

  • 従来鋼材:約67.9t-CO₂
  • 「ほぼゼロ」採用後:約52.1t-CO₂
  • 削減量:約15.8t(削減率:約23.3%)

スケール試算:年間100棟で1,580t

モデル棟1棟あたり約15.8tの削減を、年間約100棟の供給規模に掛け合わせると、年間約1,580t-CO₂の削減となる。これは企業レベルのScope3(カテゴリ11:販売した製品の使用)削減にも貢献するほか、建設段階のGHG開示対応として説明責任を果たせる数値。

「標準仕様化」のポイント

案件ごとに低CO₂鋼材を選定するのではなく、標準仕様として規定することで、調達・設計・施工の各プロセスで個別判断が不要になる。単価・品質・納期の整合性を事前に確認した上で規格化することが現実的な導入のポイント。

得られた結果

  • 削減率:躯体製造段階CO₂を約23.3%削減(モデル棟18世帯)
  • 削減量:67.9t → 52.1t(差:15.8t/棟)
  • スケール効果:年間100棟適用で年間約1,580t削減
  • 位置づけ:賃貸住宅デベロッパーとして業界初の標準仕様化

他社が参考にすべき点

  • 電炉鋼材(ほぼゼロ等)は建設系Scope3削減の最速手段:設計変更・工法変更なしに、鋼材メーカーを切り替えるだけでA1-A3フェーズのCO₂を20%超削減できる。住宅・商業施設・物流施設の建設デベロッパーが最初に取り組むべき手法。
  • 「標準仕様化」が定着のカギ:案件ごとの採否判断にすると採用率が下がる。全案件への一括適用を前提に規格化することで、調達・設計・施工の手間を省きながら確実な削減効果を積み上げられる。
  • 23.3%・15.8t/棟(18世帯)が業界の参考数値:類似規模(15〜20世帯の賃貸マンション)での建設時CO₂算定・削減目標設定に活用できるベースライン。
  • LCA開示対応としての活用:建設フェーズのGHG排出量開示(TCFD・建築物省エネ法改正対応等)において、具体的な削減施策の説明資料として使いやすい事例。