やったこと
帝人は愛媛県松山市の松山事業所北地区(同社最大の生産拠点)に、川崎重工業製ガスタービンコジェネレーションシステム「PUC80D」(M7A-03D型)を4基導入し、2026年2月より稼働を開始した。4基合計の発電出力は約3万kW(発電効率33.1%・総合効率85.2%)。従来使用していた石炭・石油から都市ガスへ燃料を全面転換し、同事業所の「完全脱石炭化」を達成した。投資額は受配電設備の更新を含め百数十億円。CO₂排出量は2018年度比で年間約20万トンの削減見込みとなった。
具体的な手順・工夫
ガスコジェネシステムの選定
「PUC80D」は川崎重工業が全機種ラインアップで市場投入を完了した水素混焼対応DLE(Dry Low Emission)燃焼器を搭載したガスタービンコジェネシステム。DLE方式により低NOx燃焼を実現している。1基あたり発電出力7,610kWの機種を4基並列構成で採用し、大型工場の電力需要に対応。
コジェネによるエネルギー最適化
コジェネレーション方式の採用により、発電時に発生する排熱を工場プロセス(蒸気など)に有効活用。電力と熱を同時供給することで総合効率85.2%を実現。電力と熱を個別に調達するより大幅に効率が高く、このエネルギー効率向上分がCO₂削減の核心。
水素混焼対応で将来の脱炭素化ロードマップを確保
DLE燃焼器の最大の特徴は、ガスタービン本体を改造することなく水素を体積比最大30%まで天然ガスと混焼できる点。水素圧縮機・燃料混合システムの追加のみで移行でき、将来的な水素専焼対応も視野に入れた段階的脱炭素設計。カーボンニュートラル期限(2050年)に向けたステップアップ型投資として機能する。
設備更新機会との組み合わせ
大型の受配電設備の老朽化更新タイミングに合わせてコジェネ導入を実施。設備更新の固定コストとコジェネ投資を一体で計画することでコスト効率を高めた。
得られた結果
- CO₂削減量:年間約20万トン(2018年度比)
- 発電出力:約3万kW(PUC80D×4基、1基7,610kW)
- 燃料転換:石炭・石油→都市ガス(完全脱石炭化達成)
- 総合効率:85.2%(発電効率33.1%)
- 稼働開始:2026年2月
- 投資額:百数十億円(受配電設備更新含む)
他社が参考にすべき点
- 電源設備の更新機会を脱石炭化の「窓口」にする:老朽化設備の更新は避けられない固定コスト。このタイミングでガスコジェネに切り替えると、更新投資の中でCO₂削減効果を同時に実現できコスト効率が最大化する。
- DLE燃焼器搭載コジェネは水素化への「エスカレーター」:現時点では都市ガスで導入しながら、将来の水素価格低下・インフラ整備に合わせて段階的に混焼→専焼に移行できる。投資の陳腐化リスクを最小化した設計。
- 大型工場のCO₂削減コストの試算基準:帝人松山の場合、百数十億円投資で20万t削減/年。削減コストは概算6〜7万円/t・年。繊維・化学・重工業系の大型工場における脱炭素設備投資の参照水準。
- 完全脱石炭化の実現事例:エネルギー多消費型の大型生産拠点でも、ガスコジェネ置換による完全脱石炭化が実現可能なことを示す最新の国内実証事例。