研究の概要

Vehicle-to-Grid(V2G)技術は電気自動車(EV)のバッテリーを電力系統の調整力として活用する有望な手法だが、従来の制御手法では個々のEVオーナーの充電・放電スケジュール、バッテリー残量、充電パターンなどの個人情報が必要であった。本研究では、こうした個人データを収集・開示せずにEV集団の電力出力と柔軟性を精度よく推定し、系統周波数調整に活用する「プライバシー保護型データ駆動フレームワーク」を提案した。

双線形隠れマルコフモデル(Bilinear Hidden Markov Model)を用いることで、集計データのみから個々のEV挙動のパターンを推定し、系統オペレーターが必要とする制御信号を生成する。フェデレーテッドラーニング(分散学習)や従来のモデルベース手法と比較検証を行った。

主な発見・成果

  • 個人のEVデータ(到着・出発時刻、バッテリー仕様、充電状態)を使わずに集計EV群の電力出力推定が可能
  • 個別SOC(充電状態)データに誤差がある場合でも、モデルベース手法やフェデレーテッドラーニングを上回る性能
  • 系統周波数調整への応用で実用的な有効性を実証
  • IEEE Transactions on Smart Grid に採択済み

実務への応用

EVのV2Gプログラムをビジネス化する際の最大障壁の一つはプライバシー問題である。本手法により、集計データのみで高精度な需給調整が可能なことが示されたため、EVオーナーの個人情報保護を担保しながらデマンドレスポンスサービスを設計できる。日本のEV充電インフラ事業者・電力会社・アグリゲーターが周波数調整サービスの設計・提案を行う際の技術的根拠として活用できる。