実装のポイント

出光興産の子会社「ケミカルリサイクルジャパン(CRJ)」は2026年4月27日、千葉県市原市において廃プラスチックを油化するケミカルリサイクル工場の商業運転を開始した。年間処理能力は2万トン。焼却・埋め立て処分されていた使用済みプラスチックを「CR油(化学リサイクル油)」に転換し、既存の石油精製インフラへ投入するという、新規設備投資を最小化しながら資源循環を実現するモデルである。

ポイントは、出光興産グループが保有する既設の製油所・石油化学装置をそのまま活用している点だ。「廃プラ→CR油→既存装置→化学品」というサプライチェーンを構築し、上流のリサイクル段階だけに特化した設備を設置する分業構造により、スタートアップコストを大幅に抑えている。

具体的な手順

ステップ1:廃プラスチックの収集・産廃許可の取得

家庭・企業から排出された使用済みプラスチックをCRJの市原工場に集約する。産業廃棄物処理業の許可(千葉県)を取得済みのため、産廃として適法に受け入れることが可能。許可取得が廃プラ油化事業の法的前提条件となる。

ステップ2:接触分解による油化処理

触媒を用いた「接触分解システム」でプラスチックを加熱・分解し、軽質原油相当の「CR油」を生成する。熱分解(触媒なし)と比較して、接触分解は反応効率が高く均質な油質が得られる点が特長。生成されたCR油は出光興産グループの製油所・石油化学装置(既設)に投入される。

ステップ3:マスバランス方式とISCC PLUS認証による証跡構築

CR油を既設装置に投入する際は「マスバランス方式」を採用。これは投入した再生原料の量に比例して、生産された製品の一部に「ケミカルリサイクル由来」の属性を割り当てる手法である。ISCC PLUS(国際持続可能性・カーボン認証)を2026年3月に取得することで、この属性割り当ての第三者検証が担保される。認証の取得により、取引先企業がCFP(カーボンフットプリント)算定やScope3削減報告に使える証跡として提供できる。

得られた結果

  • 年間2万トンの廃プラスチックを焼却・埋め立てから回避し、化学原料として循環させることを商業スケールで実証
  • CR油を軽質原油代替として既存精製装置へ投入することで、化石由来の新規原油採掘消費を代替
  • ISCC PLUS認証取得により、取引先企業のScope3 カテゴリー1(購入した製品・サービス)の排出係数削減に使える証跡を提供
  • 既設インフラを最大限活用した分業モデルにより、油化設備投資リスクを最小化しながら大規模化を実現

ケミカルリサイクルを通じて脱炭素と資源循環を両立するモデルとして、製造業・流通業のScope3削減施策の参照事例となる。