研究の概要
再生可能エネルギー由来の淡水供給は、気候変動による水不足と脱炭素化の両課題を同時に解決する有望なアプローチである。本研究は、波力エネルギー変換器(WEC)と逆浸透膜(RO)を組み合わせた波力駆動型海水淡水化システムを対象に、多目的・多分野統合設計最適化(MDO)フレームワークを構築した。
従来アプローチでは、WECと淡水化プラントを別々に設計・最適化していたため、両システムの相互依存関係を活用できていなかった。本研究は流体力学・電力伝達系・RO制約・経済コスト分析を一体的に最適化する枠組みを構築し、「より小型のWECとより大型のROプラント」という従来の直感に反する最適設計解を見出した。
主な発見・成果
- MDOフレームワークにより、名目設計比69.5%の水生産コスト(LCOW)削減を達成
- 逐次設計アプローチと比較してMDOが一貫して優れた性能を発揮することを実証
- 最適設計は「小型WEC+大型アキュムレーター除外+大型ROプラント」という反直感的な構成
- 複数の海象条件にわたって最適設計トレンドが安定しており、様々な沿岸立地への適用可能性を確認
- 設計解は再現可能なオープンフレームワークとして公開済み
実務への応用
沿岸地域・島嶼部・離島での水インフラ開発担当者にとって、波力エネルギーと海水淡水化の統合設計は競争力ある事業モデルを実現する鍵となる。従来の「系統外(オフグリッド)」淡水化プロジェクトではディーゼル発電が主流だが、本フレームワークを用いることで再生可能エネルギー100%の水供給が採算ベースで実現できる可能性が広がる。特に日本の離島や発展途上国の沿岸都市における分散型水インフラ投資の評価に活用可能。また、WEC設計とROプラント設計を個別に発注せず、統合設計・最適化の視点でEPC契約を組む際のロジックとしても参照価値がある。