研究の概要

世界が2050年ネットゼロを実現しながら、すべての人が「まともな生活水準」を維持できる電力を確保することは可能か。本研究はこの問いに答えるため、0.25°×0.25°の空間解像度・8,760時間(1年分)の時間解像度・35億パラメータを持つ世界規模の電力システムモデルを開発。容量拡張計画と運用最適化を同時に解く統合プランニング手法を適用した。

検討シナリオでは変動再生可能エネルギー(VRE:太陽光・風力)を15〜20TW規模まで導入することで、ネットゼロかつ普遍的電力アクセスが技術的に実現可能であることを示した。電力需要は国連が定義する「ディーセントリビング」水準に基づき設定し、先進国・新興国・途上国を含む全地域をカバー。

主な発見・成果

主な発見は3点。①グローバルネットゼロ電力は技術的に実現可能で、15〜20TWのVRE導入が核心。②アフリカ等の低所得地域は豊富なVRE資源を持ち、低コストの電力アクセスを達成でき気候変動対策と経済発展の両立(気候正義)が可能。③土地利用が制約として浮上し、太陽光PVだけで900万ヘクタール超(日本の国土面積の約25%)の土地が必要になる。エネルギー密度の高い技術(オフショア風力、集光型太陽熱発電等)との組み合わせが現実的な解として有望。

実務への応用

ネットゼロ移行の長期計画に携わるGX実務者にとって、このモデルは地域別のVRE導入ポテンシャルと土地利用制約を可視化する参照ツールとなる。再エネ投資先の選定(低コスト・高ポテンシャル地域の特定)、長期エネルギー調達戦略の地政学的リスク評価、サプライチェーンのScope2最適化に活用できる。土地利用制約は今後のGHGシナリオ分析に必ず組み込むべき変数。