やったこと

キリンホールディングスは2026年4月30日、SBTi(Science Based Targets initiative)から「SBTネットゼロ認定」を再取得した。事業ポートフォリオの変化とSBTiガイドライン改訂への対応として認定を更新したもの。あわせて農業・林業・土地利用分野を対象とした「FLAG(Forest, Land and Agriculture)目標」を新規設定し、農業由来のGHG削減に向けた具体的な取り組みを公式化した。

具体的な手順・工夫

農業由来Scope3削減の3本柱

  1. バイオ炭による炭素貯留研究:長野県のシャトー・メルシャン(自社ワイナリー)を実験フィールドとして、剪定枝をバイオ炭化して土壌に還元する炭素貯留効果を研究中。農業廃棄物を炭素固定に転換するアプローチ。

  2. 農業慣行の脱炭素化:不耕起栽培(土壌炭素の流出防止)・カバークロップ(地表被覆作物による土壌有機炭素の蓄積)・化学肥料の適正管理(N₂O排出削減)を組み合わせた多層的アプローチを採用。

  3. 上流サプライヤーとの連携:アルミ缶・PETボトル・麦芽などの主要資材サプライヤーと協働し、調達先の排出削減を促す取り組みを展開。サプライチェーン上流からのScope3削減という「依頼型」アプローチ。

ガバナンス体制の整備

  • CSV委員会・グループ環境会議を活用して進捗を管理
  • 経営層の関与を強化し、新規施策の抽出から実行判断までを迅速化する体制を整備
  • 施策ごとの費用対効果をシミュレーションし、2030年時点の財務インパクトを約20億円と試算

SBTiネットゼロ認定の再取得プロセス

ガイドライン改訂への対応として認定を更新。FLAG目標の新規設定がこのタイミングで行われており、SBTiの農業・林業・土地利用分野への対応強化と連動している。

得られた結果

  • SBTiネットゼロ認定の再取得(2026年4月30日)
  • FLAG目標の設定(農林地由来GHG削減の定量目標化)
  • 2030年に向けた財務インパクト約20億円の見積もり(施策ごとの費用対効果シミュレーションに基づく)

他社が参考にすべき点

  • 農業系Scope3をFLAG目標で定量化する手法は、食品・飲料・農業資材メーカーに直接応用可能
  • 自社拠点(ワイナリー・農場)を実験フィールドに使うことで、外部委託なしに農業慣行の効果検証ができる
  • 施策ごとの財務シミュレーションを行うことで、経営層の意思決定に直結するビジネスケースを作れる
  • SBTiガイドライン改訂に伴う認定の再取得・更新フローは、既認定企業にとって参考になる事例