実装のポイント
2026年4月29日、SBTi(サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアティブ)は「絶対量削減アプローチ(ACA: Absolute Contraction Approach)」の改訂版を発表しました。これにより、温室効果ガス削減目標の設定方法が「業種横断の一律基準」から「企業ごとの削減実績ベース」に変更されます。
従来の仕組み(旧ACA):
- 全企業に対して年率4.2%の削減を一律要求
- 業種・排出規模・削減余地の違いを考慮しない
- 過去に削減に取り組んできた企業とそうでない企業が同条件で評価される
新ルール(改訂ACA):
- 企業が過去に達成した削減実績データを申請時に提出
- 実績に基づいた個別の目標ペースを設定可能
- 目標期間は申請時点から5〜10年
- 年率4.2%以上が基準ラインとして維持されるが、実績が上回る企業は実績に準拠した目標設定ができる
具体的な手順
Step 1: 過去削減実績の整理(基準年〜直近年) Scope1・2の実際のGHG排出量データを、事業所別・活動別に最低5年分整備します。削減率の計算は「基準年比(%/年)」で行い、事業拡大や組織変更があった年は境界再定義の説明資料も準備します。
Step 2: ACA改訂フォームへの入力 SBTi提供のExcelベースのターゲット設定ツール(Target Setting Tool)に、従来の排出量データに加え「過去N年間の年平均削減率」を入力します。ツールが自動計算で「ACA準拠の最低削減率」を提示し、それを超える目標を設定することが求められます。
Step 3: オフセット依存の排除確認 ACA改訂版ではオフセット(カーボンクレジット購入)による「見かけ上の削減」が評価上不利に扱われます。J-クレジット・Verra等の購入分は削減実績から除外して計算し、実際の排出削減のみをカウントします。
Step 4: バリデーション申請 目標書類一式(Commitment Letter + Target Submission Form + 実績データ)をSBTi申請ポータルに提出。審査期間は従来と同様に数ヶ月程度を見込む必要があります。
得られた結果
ACA改訂版の最大の意義は「削減の先送りペナルティ化」です。過去に積極的に削減に取り組んできた企業は、実績ベースの目標設定により競合との差別化が定量的に示せるようになります。一方、削減実績が低い企業ほど標準的な年率4.2%基準が適用されるため、実質的に「削減しなかった企業のコスト」が増加する仕組みになっています。Scope3への拡張については別途ガイダンス改訂が予定されており、2026年中の公表が見込まれています。