研究の概要

デルフト工科大学のHongjin Duらは、沖合風力発電の大量連系に伴うハイブリッドAC-HVDCグリッドの制御課題に取り組み、確率的最適潮流(SOPF)をベースとした適応型ドループ制御フレームワークを開発した。従来の固定ゲインドループ制御は、風力発電の強い確率的変動下で性能が著しく低下するという問題がある。本研究では、系統レベルの経済的ディスパッチと変換器レベルの制御を橋渡しする二層制御アーキテクチャを構築し、風力予測誤差をゾーン別ベータ分布でモデル化することで、風況の異分散性(強風時と弱風時で変動特性が異なる性質)に対応している。さらに多項式カオス展開(PCE)を用いたヤコビアンフリー感度解析により、統計的係数から最適なドループゲインをリアルタイムで導出する手法を確立した。

主な発見・成果

  • 4端子AC-HVDCシステムでの検証において、シナリオ適応型ゲインが固定係数アプローチと比較して極端な風力擾乱時の有効電力追従誤差を大幅に削減した
  • SOPF由来のドループゲインにより、電圧セキュリティ制約がローカルコンバータ制御に直接組み込まれ、系統電圧の安定性が強化された
  • ゾーン別ベータ分布モデルは、従来の一様分布モデルより現実の風力変動を精密に再現し、制御性能を向上させた
  • 多項式カオス展開による感度解析はヤコビアン計算を不要とし、計算コストを大幅に削減しながら同等以上の精度を達成した

実務への応用

日本の洋上風力開発が本格化するにあたり、本研究の知見は複数洋上風力ファームを統合するHVDCネットワークの制御設計に直接応用できる。特に、①再エネ変動に対してドループ制御パラメータをリアルタイム更新する「適応型コントローラ」の仕様策定、②確率的潮流計算を電力系統安全基準へ組み込むための方法論、③変換器の電圧セキュリティ制約を系統計画段階から考慮する設計フローの参考事例として活用できる。系統連系計画や安定化制御の担当技術者は、SOPFベースのパラメータ最適化アプローチを標準ツールとして採用する動機が生まれている。