実装のポイント

SBTi(Science Based Targets initiative)は大企業向けと中小企業向け(SME版)で申請プロセスが異なる。SME版は大企業版より簡略化されており、中小製造業でも取得しやすい設計になっている。金属製品加工メーカーのナカノ(愛知県)は2026年にSBTi SME版認定を取得し、Scope1・2排出量を2025年比で2032年までに52%削減する目標を国際基準に沿って設定した。

SBTi SME版の特徴は、大企業のように詳細なScope3算定を必須としない点にある。Scope1・2の削減目標設定と継続的なScope3の測定・削減努力の表明が中心となる。1.5°C整合の削減率(2030年までにScope1・2を42%以上削減等)に基づいて目標値が決まる。

具体的な手順

SBTi SME版認定の標準的な実装ステップ:

  1. 現状把握(ベースライン算定):Scope1(燃料燃焼・社用車等の直接排出)とScope2(購入電力)の排出量を算定する。中小企業向けの算定ツール(環境省GHGプロトコルシート等)を使用
  2. SME版申請フォームの記入:SBTi公式サイトからSME専用の「SME Target Setting Tool」をダウンロード。排出量データを入力すると自動的に1.5°C整合の削減目標が算出される
  3. 目標の設定と承認申請:算出された目標値(ナカノの場合:2025年比52%削減/2032年)をコミットメントレターとともにSBTiへ提出
  4. 削減アクション計画の策定:ナカノが取り組む具体的アクションは①生産工程の省エネ化、②再生可能エネルギー導入の検討、③環境配慮型商品開発強化、④サプライチェーン全体の排出削減の4本柱
  5. 認定後の報告:毎年の排出量データをSBTiへ報告し、目標達成に向けた進捗をトラッキングする

得られた結果

ナカノのSBTi SME版認定取得により、同社は「国際科学的根拠に基づく排出削減目標を持つ企業」として取引先・金融機関へのアピールが可能になった。製造業において主要顧客がScope3算定を本格化させる中、サプライヤーのSBT認定保有は取引継続の要件になりつつある。2025年基準年・2032年目標という設定は、現在から約7年間での削減計画であり、設備投資のサイクルと整合させやすい期間設定といえる。