研究の概要
再生可能エネルギーの拡大に伴い、太陽光・風力に接続されるグリッドフォロー型インバーター(GFL)が系統全体に占める割合が急速に高まっている。GFLインバーターは同期発電機と異なり系統に慣性を供給しないため、GFLが増加するほど系統の慣性が低下し、周波数変動・電圧不安定・角度安定性の悪化という問題が深刻化する。
本研究は、同期調相機(Synchronous Condenser: SC)がこれらの安定性問題の緩和策として有効か否かを電磁過渡シミュレーション(EMT)により系統的に評価した。SCは同期電動機を空転させた設備で、実質的な慣性と無効電力補償能力を系統に供給できる。
主な発見・成果
- 角度安定性の向上: SCの設置により発電機間の位相角逸脱が抑制され、過渡的な脱調リスクが低減
- 周波数応答の改善: SC由来の慣性補給によりRoCoF(周波数変化率)とナディア(最低周波数点)が改善
- 電圧安定性の強化: SCの動的無効電力供給能力が電圧変動の拡大を抑制
- 配置の重要性: SCを不適切な場所に設置すると脱安定化相互作用が生じる可能性があり、最適配置の検討が不可欠
- GFLとの相互作用: 特定条件下でGFLインバーターとSCの間にサブシンクロナス振動が発生するリスクを確認
実務への応用
日本でも再生可能エネルギーの比率が高まる中、慣性不足による系統周波数安定性の確保が重要課題になっている。SCは既存技術であり、比較的短期間で設置できる点が特長である。
一般送配電事業者が再生可能電源の大量連系に対応した系統補強計画を立案する際、グリッドフォーミングインバーター(GFM)や大型蓄電池と並んでSCが有効な選択肢として検討できる。特に慣性密度が低下しやすい地域・時間帯での優先設置が有効で、設置場所の最適化シミュレーション(EMT解析)が費用対効果を大きく左右する。新規再生可能エネルギー連系計画の系統影響評価においても、SC導入効果のEMT解析が有効なツールとなる。