実装のポイント

AWSクラウド利用企業がTCFD・ISSB等のGHG開示でAWS利用に伴うScope1〜3排出量を報告する際、2026年3月末に正式提供開始された「AWS Sustainability Console」を使うことで算定・レポーティングが大幅に効率化できる。従来の「Customer Carbon Footprint Tool」の後継・拡張版であり、プログラムによるAPIアクセスカスタムCSVレポート出力Scope1〜3の一元表示が新たに加わった。

最も重要な変更点は、炭素排出量データへのアクセスに請求権限(Billing permissions)が不要になったことである。専用IAMアクション(sustainability:GetEstimatedCarbonEmissions)が追加され、サステナビリティ担当チームが財務部門に依存せず独立してデータ取得・報告できる体制を構築できる。

具体的な手順

  1. IAM権限の付与:サステナビリティ担当ユーザー/ロールに sustainability:GetEstimatedCarbonEmissions および sustainability:GetEstimatedCarbonEmissionsDimensionValues の2つのIAMアクションを付与する。請求権限(Billing)は不要
  2. コンソールへのアクセスhttps://console.aws.amazon.com/sustainability/ にアクセス。月次データは翌月21日頃に利用可能(例:3月分は4月21日頃)
  3. 排出量の確認・メソッド比較:Scope1(直接排出)・Scope2(購入電力由来)・Scope3(バリューチェーン間接排出)の3軸でデータを確認。マーケット基準(再エネ調達・再エネ証書の実績を反映)とロケーション基準(電力系統平均排出係数を使用)の2算定方式を切り替えて比較できる
  4. CSVレポートのエクスポート:「Reports」タブから期間・フィルター条件を設定しカスタムCSVをダウンロード。TCFD開示資料・社内GHGレポートへの組み込みに活用する
  5. API自動化の設定:プログラムアクセス機能を活用し、AWS SDK/CLIから排出量データを自動取得。社内のGHG管理システムや経営ダッシュボードへのデータパイプラインを構築する

得られた結果

請求権限からの分離により財務部門とサステナビリティ部門の役割分担が明確になり、GHG報告業務のセキュリティ・ガバナンスが改善される。API化により排出量データの自動収集・定期レポーティングが可能となり、手動集計工数とミスを削減。AWSマルチアカウント構成(Organizations)では組織全体の排出量を一元集計できる。マーケット基準算定により、再エネ調達(再エネ証書購入・PPA等)のScope2削減効果を定量的にGHG報告に反映できる。