研究の概要
太陽光発電と蓄電池を組み合わせた住宅用・小規模商業用マイクログリッドの導入においては、最適なPV容量と蓄電池容量の組み合わせを特定する「サイジング最適化」が事業性に直結する。しかし最適サイジング問題は、設計とオペレーションを同時に解く必要があるため計算量が膨大になり、特にディーゼル発電機の起動・停止を含む混合整数問題は計算コストが高くなる。
本論文は「BOOST(Battery-solar Ordinal Optimization Sizing Technique)」と呼ぶ二段階フィルタリング手法を提案した。第1段階で「序数最適化(Ordinal Optimization: OO)」という簡易線形モデルで大量の候補設計を高速スクリーニングし、有望な設計だけを選別。第2段階でその絞り込まれた候補のみに対して精密な混合整数線形計画(MILP)を適用する。この組み合わせにより、全候補を網羅的に評価する従来手法に比べて計算時間を大幅に削減しながら最適解を特定できる。
主な発見・成果
- 計算時間51.8%削減: 全候補網羅的評価と比較してランタイムを半減させながら、グローバル最適解と同等の設計を発見
- ランキング相関完全一致: 線形計画(OO段階)とMILPのランキング順位に完全相関(ρ=1.000)が確認され、簡易モデルによるスクリーニングの有効性を実証
- 最適解の特定: 合成データセットにおいて、500 kWh蓄電池+1833.3 kW太陽光が13.169 c/kWhの最低コストを達成する最適設計として特定
- 動的計画法・グリーディ法などのベースラインより高い性能を発揮
実務への応用
再エネマイクログリッドの設計・調達担当者および省エネ設備のFSを担当するエンジニアへの示唆:(1)太陽光+蓄電池(+ディーゼルバックアップ)システムの最適容量決定において、従来の網羅的シミュレーションより半分の計算コストで同品質の最適設計が得られる。FS段階でのシナリオ比較分析(太陽光容量・蓄電池容量の感度分析)に要する時間を大幅に短縮できる。(2)競合する多数の容量組み合わせを迅速に比較できるため、蓄電池コスト・電力料金・RE100調達率などのパラメータ変化に対するロバスト性評価が容易になる。(3)系統非連系(オフグリッド)設備や離島・災害拠点における自立型電源設計において、サイジングの確実性を高めながら設計工数を削減する実用的ツールとして展開できる。