やったこと
東洋製罐グループホールディングスの子会社・東洋ガラスが、千葉県柏市の工場にガラス瓶製造用の大型ガラス溶融窯1基を「酸素燃焼方式」に切り替え、2026年4月6日に稼働を開始した。従来の空気燃焼方式からの転換により、同等の生産量を維持しながらGHG排出量の約20%削減を実現している。
具体的な手順・工夫
酸素燃焼方式とは何か
ガラス溶融窯は1,300〜1,600℃という超高温でガラス原料を溶融するため、大量の燃焼エネルギーを消費する。従来の「空気燃焼方式」では燃焼用空気を窯に吹き込むが、空気の約78%は窒素であり、この窒素を高温に加熱してそのまま排出するエネルギーロスが膨大だった。
「酸素燃焼方式」は、空気の代わりに高濃度の酸素(純度90%以上)を用いる技術。窒素を加熱するエネルギーロスがなくなることで、同じ生産量を維持しながら燃料消費量を大幅に削減できる。
技術的な仕組み
- 液体酸素をタンクに貯蔵し、気化させて燃焼用として窯へ供給
- 窒素(空気の78%)を加熱・排出するエネルギーロスを排除
- 燃料(天然ガス等)の消費量を削減し、CO₂・NOx排出量を低減
- 従来と同等の生産量・品質を維持したまま転換
窯の更新タイミングの活用 ガラス溶融窯は通常10〜15年に一度の修繕・更新(キャンペーン)時に大規模改修を行う。今回の酸素燃焼方式への転換も、この窯の更新サイクルを活用したもの。窯の更新タイミングに合わせて設備仕様を変更することで、追加的な設備停止コストを最小化している。
ガラス製造業での位置づけ ガラス瓶製造はエネルギー多消費型産業であり、溶融炉のエネルギーが全製造コストの大部分を占める。酸素燃焼方式は欧米では既に普及が進んでいるが、日本でも導入が始まっている技術。GHG排出量の2割削減は業界での重要なベンチマークとなる実績。
得られた結果
- GHG排出量の約20%削減(同等の生産量を維持しながら)
- 燃料消費量の大幅削減(具体的数値は非開示)
- 2026年4月6日より稼働開始済み
- 東洋製罐グループ全体のScope1削減に貢献
他社が参考にすべき点
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ガラス・セラミック・鉄鋼等の高温製造プロセスは酸素燃焼方式が有効:窯・溶融炉の燃焼方式を空気から純酸素に変えるだけで2割以上のGHG削減が可能。設備更新タイミングで仕様変更することで追加の設備停止コストを抑制できる。
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「ハードアビーテメント」領域の実務解として参考になる:省エネ・再エネ調達では削減しきれない製造プロセス起源のGHGに対し、燃焼方式の変更(フューエルスイッチング)はScope1削減の核心手段。SBTi中長期目標達成に向けた製造業の具体的アプローチ。
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窯の更新サイクルに合わせた計画が鍵:酸素燃焼窯への転換は初期投資を伴うが、窯のキャンペーン(修繕更新)タイミングと重ねることで費用対効果が改善する。設備更新計画とGHG削減ロードマップを紐付けて経営計画に組み込むことが実務上のポイント。