背景:建設資材Scope3削減の課題

セメント・コンクリートは世界のCO2排出量の約8%を占める高排出材料であり、建設業界に関わる企業のScope3削減において最大の課題の一つとなっている。しかし、物理的な低炭素セメントの調達は地域的制約が大きく、特定プロジェクトへの直接納入が困難なことが多かった。2026年4月、RMIとGMAが共同運営するSCoBA(Sustainable Concrete Buyers Alliance)がRFP(提案依頼書)を正式ローンチし、需要集約型のBook-and-Claimモデルで企業がScope3目標を達成できる仕組みが整った。

実装ステップ

Step 1: Book-and-Claimの仕組みを理解する

Book-and-Claimモデルでは、企業は低炭素セメント生産に紐づく「環境属性証書(Environmental Attribute Certificates:EAC)」を購入する。物理的な材料の直接納入は不要で、証書を退役(retire)することでScope3排出量削減として計上できる。地理的制約を超えて、どの企業でも低炭素セメントの削減効果を自社目標に反映させることが可能になる。

Step 2: 適格製品基準を確認する

本調達ではGCCA(全球セメント・コンクリート協会)のBand B基準以上の製品を対象とする。Band B基準は現在の業界標準比で67%以上のCO2削減に相当し、高品質な削減実績の担保となる。参加前に自社の調達仕様書とGCCA基準を照合すること。

Step 3: SCoBAメンバーシップへの申請

SCoBAに連絡しメンバーシップを申請する([email protected])。バイヤー連合として需要を束ねることで個社では不可能な規模の市場シグナルを生産者に送り、低炭素製品のスケールアップを促進する。航空業界のSAF(持続可能な航空燃料)調達や鉄鋼業界で実証済みのモデルを建設材料に展開している。

Step 4: RFPプロセスへの参加(期限:2026年6月19日)

生産者向けRFPに対して提案書を提出。バイヤー企業は参加を通じて2027年以降の調達合意を目指す。調達規模は最大年間25万トンのローカーボンセメント・年間8.5万トンCO2e削減を想定。

使うツール・標準

ツール・標準概要
GCCA Band B基準低炭素セメントの定量的品質基準(67%削減以上)
Book-and-Claimスキーム物理的調達制約を超えた証書型Scope3削減手法
SCoBA調達プラットフォームGMA/RMI共同運営の需要集約型共同調達
GHGプロトコル Scope3 Category 1購買品・サービスの排出量算定基準

成功のポイント

  • 需要集約の力:個社単独では実現困難な規模の低炭素調達も、バイヤー連合として束ねることで生産者への経済的動機を創出できる
  • 先行事例の活用:SAFバイヤーアライアンス(航空)・鉄鋼版プラットフォームで実績があるモデルを建設材料に展開。リスクが低く制度的信頼性が高い
  • 早期行動のメリット:2027年開始の初回調達において、参加企業は優先的な調達枠と市場形成への貢献者としての地位を確保できる
  • 証書の退役管理:購入したEACは必ず退役(retire)処理し、二重計上が起きないよう内部台帳で管理すること

日本企業への適用

日本の建設業・不動産業・製造業(工場建設を行う企業)は、Scope3カテゴリ1(購買品・サービス)の削減において本スキームが直接活用できる。特に:

  • SBTi目標を設定済みの企業:建設材料由来のScope3排出を定量的に削減計上し、バリューチェーン排出削減の証跡を確保できる
  • GHG算定・開示強化フェーズの企業:Scope3の主要カテゴリに具体的な削減アクションを紐づける最短ルートの一つ
  • 不動産デベロッパー・ゼネコン:テナント・投資家向けのGreen Buildingコミットメントの定量的裏付けに活用可能
  • 欧州CSRD対応企業:バリューチェーン排出削減の実績として開示書類に記載できる