背景:アジア太平洋でグリーンスチール調達が動き出す

鉄鋼はグローバルCO2排出量の約7〜9%を占める高排出セクターであり、製造業・建設業のScope3削減において最大の課題の一つだ。RMIが主導する「Sustainable Steel Buyers Platform(SSBP)」は、アジア太平洋地域のバイヤー企業の需要を集約し、グリーンスチール(ニアゼロ排出鋼材)の市場形成を加速する「バイヤー連合型」の需要集約プラットフォームだ。2026年4月現在、アジア太平洋向けのRFI(情報提供依頼)が公開中(締切:2026年5月29日)。

実装ステップ

Step 1: SSBPのプロセス全体像を把握する

SSBPは3段階のプロセスで構成される:

  1. RFI(情報提供依頼):2026年5月29日締切。市場の現状把握と需要・供給サイドの情報収集が目的
  2. RFP(提案依頼書):2027年初頭を予定。低排出調達の条件(排出閾値・調達量・タイムライン・契約モデル)を設定
  3. 個別交渉・契約締結:選定されたサプライヤーとの二国間オフテイク契約の締結

Step 2: 参加資格を確認する(バイヤー側)

バイヤーとしての参加条件:

  • アジア太平洋地域にサプライチェーンを持つ主要鉄鋼購買企業
  • IEA(国際エネルギー機関)のニアゼロ排出鋼材定義に沿った気候コミットメントを保有
  • RFIへの参加は将来のRFPや契約締結を義務付けるものではない(情報収集段階での参加は低リスク)

Step 3: 排出基準を確認する

SSBPが要求する鋼材の品質基準は「IEAのニアゼロ排出鉄鋼定義」に準拠。現時点ではおよそ2050年目標に向けた厳格な削減パスウェイ上にある製品が対象。調達先サプライヤーには高品位な排出量報告(MRV:計測・報告・検証)が求められる。

Step 4: RFIに参加する(2026年5月29日締切)

バイヤー:[email protected] にメールでメンバーシップ情報を請求する。 サプライヤー:Microsoftフォームでフィードバックを提出する(フォームリンクはSSBPページに記載)。

Step 5: 内部でグリーンスチール調達の社内合意形成を行う

RFPに進む段階(2027年初頭)では実際の調達意思決定が必要になる。以下を事前に整理しておくこと:

  • 自社の鋼材調達量(年間トン数)とサプライチェーンの地理的範囲
  • 現在の調達先サプライヤーの排出強度データ
  • グリーンプレミアム(価格差)を許容できる調達予算の上限
  • Scope3カテゴリ1の排出削減目標との整合性

使うツール・標準

ツール・標準概要
IEA ニアゼロ排出鉄鋼定義グリーンスチールの国際的品質基準
SSBP調達プラットフォームRMI主導の需要集約型鉄鋼共同調達
GHGプロトコル Scope3 Category 1購買鋼材の排出量算定基準
SBTi鉄鋼セクターパスウェイ鋼材購買企業・鉄鋼メーカーのSBTi対応基準
ResponsibleSteel認証サプライチェーン透明性・MRVの業界認証標準

成功のポイント

  • 先行参加のアドバンテージ:バイヤー連合型プラットフォームは参加企業が多いほど市場シグナルが強くなる。RFI段階から参加することで、RFP設計への影響力と優先的な調達枠の確保が期待できる
  • 需要集約の論理:日本の自動車・重工業メーカーのような大口鋼材購買企業が連合に加わることで、年間600万トン(2030年目標)のニアゼロスチール市場形成に大きく貢献できる
  • Book-and-ClaimとのHybrid活用:物理的なグリーンスチールの直接調達が困難な場合、RMIが別途展開するBook-and-Claimスキームとの組み合わせでScope3削減を計上する選択肢もある
  • グリーンプレミアムの透明化:RFIを通じてグリーン鋼材の価格プレミアムデータが集まる。業界横断での価格発見プロセスに参加することで、将来の予算計画が立てやすくなる

日本企業への適用

日本は世界有数の鉄鋼消費国であり、自動車・造船・重工業・建設機械メーカーが大量の鋼材を調達している。アジア太平洋SSBPは特に以下の企業に直接関連する:

  • 自動車メーカー・Tier1サプライヤー:サプライチェーン鋼材のScope3削減は欧州OEMからのサプライヤー要求として既に顕在化。SSBPへの参加はサプライチェーン脱炭素の具体的実績になる
  • 重工業・建設機械メーカー:設備製造に使う鋼材はScope3カテゴリ1の主要排出源。早期のグリーンスチール調達確保は競合差別化にもなる
  • 不動産・建設業:建築用構造鉄鋼のScope3削減にSSBP調達を活用できる。Green Buildingコミットメントの裏付けとして有効
  • 製鉄会社(サプライヤー側):JFEスチール・日本製鉄等のアジア太平洋の主要鉄鋼メーカーはSSBPサプライヤーとしてRFIに参加し、将来のRFPでの優先供給者地位を確保する機会がある