研究の概要
電気自動車(EV)・家庭・電力グリッドを統合したVGI(Vehicle-Grid Integration)システムは、EV搭載バッテリーを分散型エネルギー貯蔵として活用することで、再エネの自己消費最大化と電力コスト削減を同時に実現できる。本研究は屋根置き太陽光発電(PV)を含む家庭でのVGI最適化をモデル予測制御(MPC)で実装し、年間を通じた経済効果とバッテリー劣化への影響を定量的に評価した。
システム構成はEV1台・家庭負荷・PVパネル・グリッド連系で、V2G(EVからグリッドへ)とV2H(EVから家庭へ)の両方向充放電を対象。MPCはTransformerベースの家庭負荷・PV出力予測モデルを組み合わせ、ドライバーの充電ニーズを優先しながら電力コスト最小・自家消費最大のスケジュールをオンラインで最適化。バッテリー劣化モデルはカレンダー劣化とサイクル劣化を統合した包括的モデルを採用した。
主な発見・成果
1年間のシミュレーション結果:①PV単体追加(V2G/V2H なし)で年間約1,061ユーロの費用削減または収益増。②一方向充電(スマート充電)に対する双方向充電(V2G/V2H)の追加利益は最大2,411ユーロ。③双方向運用による追加バッテリー劣化は1.27%のみで、経済効果に比べて劣化コストは小さい。様々なシナリオ(電力価格・走行パターン・PV容量)を通じてこの経済的優位性は安定して確認された。
実務への応用
企業の駐車場EV充電設備計画や工場・オフィスビルのエネルギーマネジメントに直接適用できる定量的根拠を提供する。双方向充電器(EVSE)への追加投資対効果(ROI)算定の参照値として最大2,411ユーロ/年/台のデータが使えるほか、バッテリー劣化増加が1%強に留まるというデータはEVフリート運用者の意思決定に有用。PPA調達した再エネ電力のEV自家消費による電力コスト削減の経済性評価にも活用できる。