研究の概要

揚水発電(Pumped-Storage Hydropower: PSH)は再生可能エネルギーの変動性を吸収する重要な調整電源だが、運転スケジューリングには複雑な制約(ダム水位の動力学・発電と揚水の切り替えコスト・最小起動停止時間等)が伴い、大規模な混合整数計画問題となる。本研究はこれを「イベントベース動的計画法」で再定式化する新手法を提案する。

PSHの運転スケジュールをモード別イベント(発電開始・停止・揚水開始等)の時系列として表現し、各イベント内の最適ディスパッチを線形計画で解く構造に変換。これにより元の問題がイベントネットワーク上の決定論的動的計画問題となり、従来の時間インデックス型定式化より計算量が大幅に削減できる。水力ショートサーキット運転等のモード追加もイベントモジュールの追加だけで対応可能で、拡張性が高い設計。

主な発見・成果

数値実験の結果、提案フレームワークは従来の時間インデックス型混合整数計画と等価な最適解を与えつつ計算効率で大きな優位性を示した。連続状態問題に対しては有限格子近似による線形計画定式化と、LP下界を利用したイベントベース分枝限定法を提案し、両アルゴリズムで実用的な計算時間内での求解を確認。モジュラーな設計により、異なる運転モードや市場参加形態(スポット・調整力・容量市場)への拡張が容易だ。

実務への応用

再エネ大量導入が進む日本でも揚水発電の最適運用は系統安定化コスト削減の鍵となる。本手法は揚水発電所の入札戦略最適化(卸電力市場・需給調整市場への同時参加)や、AIを用いた自動スケジューリングシステムの開発に応用できる。水素製造等の新たなオペレーションモードを持つ揚水発電の運用計画にもフレームワークの拡張性が活かせる。