研究の概要

太陽光・蓄電池・EV・デマンドレスポンスなどの分散型エネルギーリソース(DER)は、電力系統の信頼性(資源充足性:Resource Adequacy)に貢献できる潜在的能力を持つ。しかし容量市場への実際の参入は依然として限定的である。本研究は、その原因が「DER技術の未熟さ」ではなく「制度設計の構造的問題」にあることを、米国・欧州5管轄区域の比較分析によって明らかにした。

研究チームは、DERが容量市場参加を達成するまでのプロセスを「予測→参入分類→計量・検証→能力値認定→執行」の5段階コンプライアンスゲートとして定式化し、各ゲートの障壁を識別するとともに、ゲート間の「クロスステージ結合メカニズム」(一段階の改革が他段階の障壁に波及する現象)を分析した。FERC Order 2222など先進的な規制改革が普及しない構造的理由を初めて体系的に解明した研究として注目される。

主な発見・成果

  • 技術ではなく制度が制約:コンプライアンス・アーキテクチャこそがDERのファーム容量貢献を阻む真の制約因子であることを5管轄区域の比較で実証
  • 4つの横断的障壁を特定:計量手法の非標準化・小規模リソースの集約ルール不整備・認定値算定の保守的バイアス・性能不適合時のペナルティ非対称性の4障壁を確認
  • クロスステージ結合の発見:単一ステージの規制改革が意図せず他ステージの障壁を強化する連鎖効果を確認。断片的改革が機能しない理由を解明
  • システム的再設計の必要性:個別技術改善や単一規制変更ではなく5段階全体を連動させた制度再設計が必要との政策勧告を提示

実務への応用

蓄電池・V2G・デマンドレスポンス資産の容量市場・需給調整市場参入を検討する事業者にとって、どのコンプライアンスゲートが実際の収益化を妨げているかを事前診断するフレームワークとして活用できる。また電力市場改革に関与する政策担当者・規制当局は、DER参入促進の制度設計において、この「5段階ゲート×クロスステージ結合」の視点を取り入れることで先行事例の限界を超えた制度設計が可能になる。国内で進む需給調整市場・容量市場の制度拡充においても、DER参入障壁の診断フレームとして応用価値がある。