研究の概要
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施するグリーンイノベーション基金事業において、ローム株式会社が「8インチSiC(炭化ケイ素)MOSFETの開発」に係る技術目標を当初計画より2年前倒しで達成したことが発表された(2026年4月2日)。
SiCパワー半導体は、従来のシリコン(Si)ベースのパワー半導体(IGBT・MOSFET等)と比較して、耐高電圧・高温動作・低オン抵抗という優れた特性を持ち、電力変換器の損失(発熱ロス)を大幅に削減できる。これまではコストが高く・ウエハが小径(4〜6インチ)という制約が大量普及の障壁だったが、今回の成果はこれら両方の課題を同時にクリアした。
主な発見・成果
- 8インチSiCウエハ技術の確立: 従来の4〜6インチから8インチへの大口径化により、ウエハ1枚あたりのチップ取得数が増加しコスト削減を実現
- 電力変換損失50%以上削減: 従来のSi IGBTデバイスを用いた電力変換器と比較して、電力変換時の損失を50%以上削減することを実証
- Siデバイス同等コストの達成: シリコンパワー半導体と同等の製造コスト競争力を確認し、SiC採用の経済的障壁を撤廃
- 8インチ製造ラインの完成: 量産化に向けた8インチSiCデバイス製造ラインの構築を完了
実務への応用
SiCパワー半導体はGX機器の中核部品として、太陽光パワーコンディショナー(PCS)・EV充電器・EV駆動インバーター・産業用モーター駆動・系統用蓄電池インバーターなど広範な機器の効率向上に直結する。コストとウエハサイズという2大障壁が解消されたことで、SiC採用の経済合理性は以前と比較して大きく改善した。
省エネ設備投資・電動化計画を進める企業のGX担当者は、SiCデバイス採用前提での電力変換器効率改善効果を改めて試算することを推奨する。従来のSi IGBTからSiCへの置き換えで電力変換損失が半減すれば、インバーター内蔵の設備(空調・コンプレッサー・モーター・充電器)の年間電力コストと省エネ貢献量が大幅に改善する。EV充電インフラ事業者・太陽光発電O&M事業者・工場設備更新担当者は、次世代機器選定においてSiCデバイス採用機器を積極的に評価すべき時期が来ている。2050年カーボンニュートラル実現に向けたサプライチェーン脱炭素(スコープ3削減)においても、SiC採用による電力変換効率向上は重要な削減手段となる。