研究の概要
米国の電力系統は、クリーンエネルギー転換・系統信頼性・電力の手頃さ・気候変動対応という複数の目標達成を阻害するほど「過小投資かつ断片化した」状態にある。本論考(Nature Energy掲載のパースペクティブ論文)では、この問題の根本原因として技術的・資源的制約ではなく「グリッドガバナンスの設計」にあると論じる。
著者のShelley WeltonとJoshua Maceyは法学・規制政策の専門家で、電力系統ガバナンスの法的・制度的側面を分析。現行の規制・市場設計が送電投資インセンティブを歪め、地域間連系の障壁を作り、クリーンエネルギー目標の達成を構造的に阻害していることを論証する。
主な発見・成果
- ガバナンスが根本原因: 技術的実現可能性・資源的十分性は確認されているにもかかわらず、グリッド統合が進まない主因は制度・規制の設計にある
- 送電投資の構造的問題: 現行ガバナンス構造が送電インフラへの十分な民間投資を引き出せていない
- 分断化の弊害: 多数の独立系統運用者が乱立し、地域をまたいだ最適な送電計画・連系が困難
- 改革の前提条件: より強固なグリッドを構築するための前提条件として、ガバナンス改革が技術的対策に先行または並行して必要
実務への応用
日本においても再生可能エネルギーの大量導入に向けた「系統制約問題」は深刻な課題となっており、技術的対策と並行して制度・ガバナンス改革の重要性が増している。
再生可能エネルギー事業者が直面する接続可能量問題・連系コスト問題は、単なる技術的制約ではなく送電計画・費用負担のガバナンス設計に起因する部分が大きい。政策立案者・規制当局・電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、送電容量拡大の技術的投資だけでなく、接続費用の配分ルール・系統計画の意思決定プロセス・規制インセンティブの設計改革を同時並行で進める必要がある。再生可能エネルギー事業者・PPA事業者も技術的プロジェクト開発と並行してガバナンス・規制改革への政策参画が事業性確保の鍵になる。