研究の概要
EV普及の最大の障壁のひとつが充電時間の長さだ。急速充電は充電時間を短縮する一方、リチウムイオン電池の劣化(アノード電位低下によるリチウム析出、熱劣化)を加速させるリスクがある。従来の急速充電プロトコルは電流制限に焦点を当てており、熱管理との統合制御は十分に研究されていなかった。
Stellantis・VDL Nedcar等の研究チームは、電気化学的単粒子モデル(SPMe)と2ノード熱モデルを統合し、充電電流と熱抵抗を同時に最適化するデュアル解像度MPC(モデル予測制御)フレームワークを開発した。アノード電位・コア温度・セル電圧の内部状態をリアルタイム予測しながら、劣化指標を制約として組み込むことで安全かつ高速な充電を実現する。
主な発見・成果
- メーカー推奨の充電プロファイルと比較して充電時間を42.2%削減(劣化増加なし)
- MPC制御はPID制御比でさらに5.2%の充電時間短縮を達成
- 熱管理と電気化学制御の統合が急速充電において未活用のポテンシャルを持つことを実証
- 計算コストとのトレードオフが課題(MPCはPIDより計算負荷が高い)
実務への応用
EV充電インフラ事業者・OEMにとって直接活用可能な知見。急速充電ステーションのファームウェア設計や充電アルゴリズムの改善に応用できる。42%の充電時間短縮は、同じ充電設備で処理できる車両台数の増加(=収益向上)に直結する。劣化を増加させずに実現できる点は、バッテリー保証管理にも貢献する。また、電池2次利用(V2G、定置型ストレージ転用)の寿命延長にも間接的に寄与する。