やったこと
Certainty Softwareが2026年6月に公開した調達部門向けScope 3コンプライアンスガイドを基に、2026年時点の規制動向・15カテゴリの概要・調達プレイブックを整理した。カリフォルニア州SB 253・EU CSRD・IFRS S2への対応を一括して俯瞰できる内容となっている。
2026年の規制状況
Scope 3は「任意開示」ではなくなりつつある。主要な動向は以下の通り:
- 米国(連邦): SEC気候規則は停止中。ただし州レベルの規則は停止せず
- カリフォルニア州 SB 253: 2026年2月26日にCAREBが初期規則を採択。Scope 1・2の初回報告期限は2026年8月10日。Scope 3の報告開始は2027年から(段階的・カテゴリ別等、3つの実施オプションを検討中)
- EU CSRD / ESRS E1: EU域内で段階的にScope 3開示・保証が義務化(30カ国以上でIFRS S2を参照基準として採用中)
- IFRS S2: 30カ国以上が採択または参照基準として認定済み
重要なシグナル: Scope 3は企業の炭素フットプリントの平均約75%を占める(CDP Supply Chain Report 2024)。Category 1(購入した財・サービス)が通常最大のカテゴリ。
Scope 3の15カテゴリ概要
上流(Categories 1〜8)
- 購入した財・サービス(通常最大カテゴリ)
- 資本財
- 燃料・エネルギー(Scope 1・2以外)
- 上流の輸送・流通
- 事業活動から発生する廃棄物
- 出張
- 従業員通勤
- 上流のリース資産
下流(Categories 9〜15) 9. 下流の輸送・流通 10. 販売した製品の加工 11. 販売した製品の使用 12. 販売した製品の廃棄 13. 下流のリース資産 14. フランチャイズ 15. 投資
調達部門向けの実装プレイブック
2026年版の3ステップアプローチ
- サプライヤーのセグメント化: 支出規模・排出インパクト・データ入手可能性でサプライヤーを優先度別に分類。Category 1(購入財・サービス)が最大のレバレッジポイント
- 高インパクト層へのエンゲージメント: 上位20〜30%のサプライヤーに絞り込み、排出量データの提供を協力依頼。SBT設定済みサプライヤーを優先選定基準に
- モデル推計値を実測値に置き換え: 業界平均排出原単位(modeled estimates)からサプライヤー固有の実測データへ段階的に移行
データ調達の難易度別整理
- 取得しやすい: 出張(T&Eシステム)・廃棄物(社内)・従業員通勤(HR調査)
- 難しい: 上流輸送・リース資産・資本財
- 最も難しい: 下流加工・使用段階・廃棄後の排出
なぜCategory 1から着手するか
購入した財・サービスへの支出が最大のScope 3排出源であり、かつ調達部門が最も直接的にコントロールできるカテゴリだ。このCategory 1のデータが弱ければ他のカテゴリをいかに精緻化しても意味が薄い。調達×ESGの統合が最も費用対効果の高いScope 3削減手段になる。
日本企業への示唆
2026年度にGX-ETS(義務的排出量取引制度)が始動する日本でも、Scope 3の計測・開示能力は対外的な信頼性の要件として早急に整備が必要だ。海外企業への輸出依存がある製造業は、欧米取引先からSB 253/CSRDに基づくScope 3データ提出を要求される可能性がある。