実装ステップ

SBTi(Science Based Targets initiative)の企業ネットゼロ標準V2.0は2026年に正式公開され、製造業・サプライヤーに大きな変化をもたらしている。

ステップ1:カテゴリ確認とScope3目標の要否判断

V2.0では企業規模・所在国によって義務が異なる。中低所得国の中小企業はScope3目標が任意となった。Category A企業は以下3つのオプションから選択できる:

  • 絶対削減目標(従来型)
  • サプライヤー・顧客アライメント目標(Tier1サプライヤーのSBT認定率で測定)
  • 排出集約的活動目標

ステップ2:Scope1・Scope2を分離して戦略立案

V2.0ではScope1とScope2が独立した要件となった。

  • Scope1:化石燃料フェーズアウト計画の策定が必要
  • Scope2:立地ベースのインベントリ評価を行い、実行可能な削減措置をすべて実施した後でのみ、市場メカニズム(再エネ証書等)が進捗として認定される

ステップ3:ローリング5年サイクルへの移行

従来の長期・ネットゼロ目標は任意となり、5年ごとの検証サイクルに移行。2030〜2035年の第1サイクルに向けた移行ロードマップを作成し、組織全体の合意と費用便益分析を準備する。

ステップ4:サプライヤーデータの収集体制構築

Scope3目標を持つ企業は、Tier1サプライヤーのステータス確認が必須となる。以下のデータを収集:

  • サプライヤー固有の排出原単位データ
  • 製品のcradle-to-gate カーボンフットプリント
  • SBT認定状況またはネットゼロアライメント状況

ステップ5:カーボンクレジットの位置づけを明確化

V2.0では、カーボンクレジットは脱炭素化の代替手段として認められない。除去クレジット(removal credit)は残余・削減困難な排出量にのみ適用可能。

使うツール・標準

  • SBTi Corporate Net-Zero Standard V2.0:目標設定フレームワーク
  • SBTi Scope 3 Guidance:バリューチェーン排出量の算定・目標設定手引き
  • CDP Supplier Engagement Rating:サプライヤーエンゲージメントの評価
  • GHGプロトコル企業基準:排出量インベントリの基礎

成功のポイント

  1. 早期にカテゴリ確認:V2.0の義務内容は企業規模・所在国によって大きく異なる。自社のカテゴリを先に確認してから計画を立てる
  2. Scope2の順序を守る:市場メカニズムの活用は「実行可能な削減措置をすべて実施後」が条件。RE100参加だけでなく、省エネ・オンサイト発電の実施が前提
  3. サプライヤー調達部門との連携:Scope3対応はサステナビリティ部門だけでなく、調達・購買部門との協働が必須
  4. ローリングサイクルに備えた内部体制:5年ごとの再認定に備え、継続的なモニタリング・報告体制を構築する

日本企業への適用

日本の製造業大手はすでにSBTi認定を多数取得しているが、V2.0対応ではTier1サプライヤーへの要求レベルが大幅に上がる点に注意が必要。中小サプライヤーが多い日本のサプライチェーン構造では、主要OEMがサプライヤーのSBT認定取得を支援する仕組みづくりが急務となる。また、Scope2のlocation-based要件は、日本の電力ミックスの地域差を踏まえた戦略が求められる。