実装のポイント
キリンビール北海道千歳工場では、工場内の蒸気製造に使う都市ガスの一部をグリーン水素に切り替える実証事業を2026年7月に開始した。外部事業者モデルで設備リスクを委託しながら、Scope1排出削減を狙う点が特徴的だ。
設備構成(詳細):
- 水電解装置:PEM(固体高分子型)方式、100 Nm³/h × 2台(メーカー:高砂熱学工業)
- 整流器:TMEIC製 自励式
- 冷却設備:冷却塔 + 空冷チラー
- 水素ボイラー:2 t/h(設計:三浦工業)
- 太陽光発電:284 kW(JAソーラー製両面発電パネル 448枚、ファーウェイ製分散型PCS 4台)
- 水素供給路:公道下地中埋設の水素導管
電力調達: 水電解用電力の1/3を太陽光(自社発電)、残り2/3を系統電力(非化石証書付き)で賄うことで、製造した水素の「グリーン」性を担保している。
具体的な手順
- 役割分担を明確にする:MTグリーンエナジー(三菱商事+高砂熱学出資)が水電解設備の運転・維持管理を担当。MCKBエネルギーサービス(三菱商事クリーンエナジー出資)が水素ボイラーで蒸気製造・供給を担当。キリンは購入側に徹する。
- 水素インフラ整備:工場内に水電解装置を設置し、公道下に地中埋設の水素導管を敷設して蒸気ボイラー棟に供給する。
- 段階的なガス切替:既設の都市ガスボイラーを水素ボイラーに置き換え、年間熱需要の最大23%を水素で代替する。
- 10年間の実証:安全性・技術評価・経済性を検証し、他工場への展開可能性を評価する。
得られた結果
- 年間CO2削減量:約464トン(熱需要の23%を水素で代替した場合)
- 実証期間:10年間(2026年〜2035年予定)
- 既存工場設備の改修範囲:主にボイラー棟と配管。電気系統の大幅工事は不要。
この実証はSPCを介した外部事業者モデルで実施するため、キリン単体では水素製造設備への初期投資は不要。食品・飲料業界の工場向け水素転換の先行事例となっている。