やったこと
Bird & Bird東京オフィスのパートナー田辺正裕弁護士が2026年3月のアジア洋上風力デー(第17回)での講演をもとに執筆した解説記事を整理。日本のコーポレートPPA(オンサイト・フィジカル・バーチャル)の構造・規制変遷・市場成長と、オーストラリア・シンガポール等アジア太平洋各国の動向を日本語でまとめた。
具体的な手順・工夫
日本のコーポレートPPA 3類型
- オンサイトPPA:発電設備と消費施設が同一敷地(例:屋根太陽光)
- フィジカルPPA:異敷地・系統経由で電力を物理的に調達
- バーチャルPPA:異敷地・電力は物理的に送らず「非化石証書(非FIT非化石証書)」の属性価値のみ移転
日本のコーポレートPPA規制変遷(2022〜2025年の4つの転換点)
| 時期 | 変更内容 | 実務上の影響 |
|---|---|---|
| 2022年4月 | FIPスキーム導入(FIT代替) | 新設再エネ発電所がFITを使えなくなり、コーポレートPPAが必須手段に |
| 2022年 | 非FIT非化石証書の直接移転が解禁 | 発電事業者→需要家への直接移転が可能となりバーチャルPPAが実質的に誕生 |
| 2022年 | デリバティブ免許不要の規制明確化 | バーチャルPPAの最大の法的障壁が解消 |
| 2025年 | 公正価値評価(時価評価)の不適用を会計規則で明確化 | デリバティブとして時価評価が求められるという最後の実務障壁が撤廃 |
日本市場の成長(2022→2025)
- 2022年:コーポレートPPA 30件発表(うちバーチャル6件)
- 2025年:148件発表(うちバーチャル33件) = 全体5倍・バーチャル5.5倍
- 取引件数は先進国(欧米・オーストラリア)には及ばないが着実に増加中
アジア太平洋各国の動向
オーストラリア
- アジア太平洋最大のコーポレートPPA市場。オンサイト・フィジカル・バーチャル(シンセティック)の3類型が整備済み
- LGC(Large-scale Generation Certificate、2011年〜)が市場を牽引
- 2027年からLGCを**REGO(Renewable Energy Guarantee of Origin)**に移行:年次ベース→時間単位ベースになりクレジット価値が時間帯によって変動、PPA構造への影響が大きい
シンガポール
- シンガポール・グリーンプラン2030で2030年2GWp太陽光目標
- 主にオンサイトPPAとバーチャルPPAの2類型
- 2022年から100MWの再生可能水力をマレーシアから輸入開始
得られた結果
- 2025年の会計ルール明確化によりバーチャルPPAの実務採用に向けた最後の障壁が撤廃
- 2022〜2025年の規制整備により日本のバーチャルPPA件数は5倍超に増加
他社が参考にすべき点
- バーチャルPPAは2025年以降が本格普及期:会計ルール明確化で契約交渉がしやすくなり、RE100・Scope2目標達成の有力手段として検討できる
- フィジカルPPAとバーチャルPPAの選択は属性証書の移転有無がポイント:物理的な電力調達が必要かどうかで形態が決まる
- アジア太平洋では各国の証書制度を把握する必要あり:オーストラリアのREGO移行(2027年)は時間単位ベースになるためPPA契約条件の再設計が必要になる