やったこと
リクロマ株式会社が2026年1月更新版で公開したコラムは、Scope 3削減で多くの企業が陥る「活動量を減らすしかない」という構造的な誤解を解消し、算定精緻化と1次データ化という2つのアプローチで経済活動を縮小せずに排出量を削減する実践手法を整理した。住友林業の実装事例も取り上げられている。
具体的な手順・工夫
Scope 3排出量の算定式の基本構造
Scope 3の排出量 = 活動量 × 排出原単位
- 活動量:取引量・輸送量・廃棄量・各種取引金額など事業活動の規模を示す数値
- 排出原単位:活動量1単位あたりの温室効果ガス排出量。省庁や自治体が定める基準値(2次データ)を使うケースが多い
削減手法①:算定式の精緻化(住友林業の事例)
- 基本算定式に「自社ではなく委託先が排出した物量の割合」という変数を追加し、算定式を精緻化
- 物品調達量自体は変えずに、委託構造の変化(自社直接施工→委託施工比率の変動)を排出量に反映できるようになった
- 削減ロジック:削減可能な「因数」を増やすことで、それぞれの因数で削減努力を反映する経路を増やす
削減手法②:排出原単位の1次データ化
- 2次データ(現状):業界平均の国公的データベース(環境省IDEA等)を使用。サプライヤーの削減努力がどんなに大きくても、自社Scope 3に反映されない
- 1次データ(移行先):サプライヤーから直接取得した企業固有の排出量データを利用
- 製品別カーボンフットプリント(製品ベース)
- 企業別排出原単位(組織ベース)
- 全サプライヤーの一括1次データ化が難しい場合は「ハイブリッド方式(一部を1次データに置き換え)」から開始することが現実的
実施上の注意点
- 排出原単位を金額ベースから重量ベースに変更するだけで算定精度が上がるケースもある
- 1次データ取得が困難なカテゴリは、データ収集テンプレートを整備してサプライヤーへ提供することで取得率を上げる
得られた結果
- 算定式精緻化により「委託先の排出行動を自社削減として計上」できる構造が確立される
- 1次データ化により「サプライヤーが省エネ設備を導入したその成果が即座に自社Scope 3に反映される」循環が生まれる
- 物品調達量・輸送量を減らさない形でScope 3を削減できるため、売上成長と排出削減の両立が可能になる
他社が参考にすべき点
製造業・建設業・卸売業など委託構造が複雑な企業向けの2つのポイント:
- 「排出量削減 = 活動量削減」という誤解から脱却——算定式の変数を増やすか、排出原単位を1次データに変えるだけで、経済活動を縮小せずに排出量を下げられる構造を作れる。
- 住友林業モデルを参考に「委託比率変数」を算定式に追加——委託先・協力会社への依存が大きい建設・製造業なら、委託先排出割合という変数を追加するだけで既存の算定フレームを大きく改良できる。