やったこと
booost techが2026年1月(5月更新)に公開した設計論は、Scope 3算定を「どの数値をどう計算するか」という精度論・作業論から脱却し、「算定結果を削減の取り組みとどう結びつけるか」という設計論として捉え直す視点を整理した。算定は終わったが説明しようとすると違和感が残る、という中間段階の企業担当者を対象にしている。
具体的な手順・工夫
Scope3算定における「設計」とは
設計とは、以下の3点をあらかじめ整理することを指す:
- 排出量の全体像をどの前提で把握しているか——金額ベース原単位を使った段階的算定か、サプライヤー別の実態に即した算定か
- 算定結果を将来どのように説明したいか——有価証券報告書・CDP・SSBJ開示の文脈ごとに「何を説明したいか」が異なる
- 排出削減の取り組みをどの段階で数値に反映させたいか——2次データのままでは削減努力が数値変化に現れない
「まず算定する」と「設計する」は矛盾しない
- 環境省の金額ベース原単位を使った算定は「全体像を俯瞰する合理的な出発点」であり、それ自体を否定する必要はない
- 重要なのは、この算定が最終形ではなく段階的な算定であると理解したうえで、「次の段階(設計)」に向けた問いを持ち続けること
- 設計とは「数値を作るための作業設計」ではなく「数値を意思決定や説明にどう使うかの整理」
なぜ算定の高度化は設計の問題なのか
- Scope 3は自社外部の排出を扱うため、算定結果は事業構造・取引構造・成長フェーズに強く依存する
- 精度だけを追っても「なぜ今年増えたのか」「削減施策の効果はいつ数値に現れるのか」という説明論点は解消されない
- したがって、「どの前提で全体像を捉え、どのタイミングで削減取り組みを反映させ、どの文脈でどう説明するか」を先に設計することが、算定高度化の効率を最大化する
得られた結果
- 算定業務が「作業」から「意思決定ツール」として機能するようになる
- 有価証券報告書・CDP・SBT申請など文脈ごとの説明が一貫性を持つようになる
- 算定高度化のどのステップが「開示説明力の向上」「削減目標達成」に最も貢献するかを判断できるようになる
他社が参考にすべき点
Scope 3算定は完了したが「この数字を何に使うのか」で迷っている中堅〜大企業のサステナビリティ担当者向けの2つのポイント:
- 算定精度より設計が先——「もっと精度の高い数値にしたい」という欲求の前に「その数値で何を説明したいか」を定義する。設計なしの精度向上は開示や削減計画との乖離を生む。
- 3つの設問を先に固める——①どの前提で全体把握か、②いつ削減努力を数値に反映させるか、③誰に何を説明するか、を整理してから算定高度化ロードマップを設計すると投資対効果が格段に上がる。