やったこと
Terrascope(テラスコープ)のブログ記事は、三菱商事とOlamの合弁会社であるMCアグリアライアンス(農産物・食品輸入販売業者)が、Scope3排出量の算定・管理ツールとしてTerrascopeを採用した事例を紹介した。同社のScope3排出量は全体の85%以上を占めており、サプライチェーン由来の排出量削減が最優先課題だった。
具体的な手順・工夫
Scope3が難しい2つの理由(同社が直面した課題)
- データ収集の工数が膨大:Scope3のデータの大半は社外取引先が保有しているため、収集に多大な工数がかかる。取引先がデータを持っていない場合はデータベース推計を使うしかなく精度が落ちる。
- 社内調整の複雑さ:算定目的・算定範囲(本社のみ/グループ全体)・精度要件・担当部署など社内で合意が必要な事項が多く、外部コンサルが必要なケースも多い。
Terrascopeが解決したこと
- 高速・高精度な算出:自動化処理により通常比約5倍のスピードでScope3データを取り込み、わずか3週間で92%以上の精度でScope3を算出。
- サプライヤーデータの補完:上流サプライヤーのデータが取れない場合でも、製品の構成部品に分解して排出量を推計できる機能を持つ。
- 排出量削減シミュレーション(what-if分析):原材料の調達ルート・加工方法の変更による排出量変化を事前にシミュレーションできる。
MCアグリアライアンスの発見
- 排出量削減シミュレーションを利用して原材料の調達ルートを分析した結果、原材料をシンガポール経由で日本へ輸送するルートに変更することで排出量を25%削減できることが判明した。
- 代表取締役社長の浦野氏は「サステナビリティの専門家のノウハウを得ることで、将来のサプライチェーン作りに関する戦略を検討できた」と評価。
今後の計画
- 排出量削減をTerrascopeで継続管理し、削減計画達成に向けた進捗をリアルタイムモニタリング。
- 温室効果ガス排出量の少ない農家・物流ルートの開拓によるサプライヤー転換を継続推進。
得られた結果
- 3週間でScope3(全排出量の85%以上)の算定が完了(従来の数ヶ月から大幅短縮)
- 輸送ルート変更による25%排出量削減の具体的施策を特定
- SBTi申請に必要な精度・データ品質の基盤を構築
他社が参考にすべき点
農産物・食品輸入・商社など調達先が分散している企業向けの2つのポイント:
- 「3週間でScope3全体を把握する」アプローチは現実的——データが整備されていないサプライヤーがあっても、構成部品ベースの推計機能があればScope3全体の算定を先に進められる。完璧なデータを待って着手が遅れるより、まず全体像を把握することを優先すべき。
- 「what-if輸送ルート分析」は調達戦略の意思決定ツールになる——原材料の調達ルート変更が排出量に与える影響を事前シミュレーションできると、脱炭素と調達コスト最適化を同時に検討できる。MCアグリのシンガポール経由ルート発見はこの典型例。