ISO 14060 ネットゼロ基準への企業対応ガイド:移行計画の必須要件と中小企業特例
ISOがネットゼロ基準を初めて標準化
2026年6月、国際標準化機構(ISO)が「ISO Net Zero Aligned Organizations Standard(ISO 14060)」草案を公開した。Amazon、Google、McDonald's等1,200名超の意見を踏まえた91ページの文書で、パリ協定定義に基づくネットゼロ戦略の「策定・実装・コミュニケーション」を規定する。草案は12週間のパブリックコメント後、2026年9月にコンセンサス成立が目指されている。
実装ステップ
STEP 1:既存フレームワークとの位置づけを確認する
ISO 14060はSBTi・GHGプロトコルとは競合ではなく補完関係。既存のGHG算定・報告フレームワーク(ISO 14064シリーズ)と統合される設計で、SBTiガイダンスも参照されている。既にSBTi申請済みの企業は、ISO 14060の要件の多くを満たしている可能性が高い。
STEP 2:移行計画の必須要件を把握する
ISO 14060では、ネットゼロ目標設定から2年以内に以下を含む移行計画を公表することが義務付けられる:
- 定量データ:目標年・基準年のGHG排出量、削減パスウェイの数値
- ビジネス統合プロセス:気候戦略が事業計画・投資判断にどう組み込まれているか
- タイムライン:年次別の削減マイルストーン
- 測定・検証アプローチ:KPIの定義、第三者保証の有無と方法
- カーボンクレジット使用詳細:使用するクレジットの種類・量・役割(補完的か主要手段か)
STEP 3:報告体制を構築する
大企業向け(標準要件):
- 年次開示
- 上記5要素を含む移行計画の全開示
- 第三者検証推奨
中小企業向け特例(SME適用を宣言した場合):
- 3年ごとの報告サイクル(年次報告の代替として認められる)
- 主要排出カテゴリへの絞り込み報告(全Scope 3カテゴリではなく、自社にとって重大なものに限定)
- 中間目標の設定(最終年度目標のみでも可)
STEP 4:コミュニケーション要件に対応する
ISO 14060は「コミュニケーション」を明示的に対象にしており、グリーンウォッシング防止が主眼の一つ。対外公表するネットゼロコミットメントには:
- 対象範囲の明確化(どの排出源・バリューチェーン段階が含まれるか)
- 前提条件・不確実性の開示
- クレジット依存度の透明化
が必要となる。広報・IR部門と連携してトーン・アンド・マナーを統一する。
使うツール・標準
- ISO 14060草案(2026年6月公開・パブリックコメント受付中)
- ISO 14064-1/2/3(GHG算定・検証の基盤標準)
- GHGプロトコル(ISO 14060が参照)
- SBTi V2.0(ISO 14060が参照・補完関係)
成功のポイント
- パブリックコメントに参加する:2026年9月のコンセンサス成立前に業界団体経由でフィードバックを提出し、自業界の特殊事情を反映させる機会として活用する。
- 2年以内の移行計画策定を今から準備:草案段階でも要件の骨格は固まっている。移行計画テンプレートを今から社内で準備し始める。
- SME特例の適用判断を早めに:中小企業特例を活用する場合は、その旨を宣言するタイミングと条件を把握しておく。
日本企業への適用
日本では気候関連財務情報開示(ISSB/SSBJ基準)の強制適用が2027年以降に始まる予定で、ISO 14060への対応は一体で考えるべき。特に「カーボンクレジット使用詳細の開示」要件は、J-クレジット・非化石証書の使用状況の台帳整備と直結する。今から記録管理体制を構築しておくことで、ISO 14060・SSBJ・SBTiの三重開示に対応できる基盤となる。