やったこと
Investment Recovery Association(米国の投資回収専門家団体)が公開した2026年版ESGプレイブックは、企業のScope3削減において見落とされがちな「余剰資産の再活用・投資回収(IR)」という手法を整理した。CDPデータによればサプライチェーン排出量はScope1+2の平均26倍に達し、GHGプロトコルはScope3が企業全体の排出量の約75%(資本集約型産業では90%)を占めると分析している。
具体的な手順・工夫
Scope3削減に直結する4カテゴリとIRの関係
投資回収(IR)は、余剰設備・廃棄予定資産の再配置・売却・再利用を通じて、以下のScope3カテゴリに直接作用する:
| Scope3カテゴリ | IR手法 |
|---|---|
| カテゴリ1(購入した製品・サービス) | 中古部品・再利用可能資材の調達で新規製造を回避 |
| カテゴリ2(資本財) | 退役設備の再配置で新規設備購入・製造を回避 |
| カテゴリ11(販売した製品の使用) | 製品の延命・再利用プログラム |
| カテゴリ12(販売した製品の廃棄) | 廃棄前のIR活動で最終処分量を削減 |
2026年規制の三重収束
- EU CSRD(Omnibus I改訂版):従業員1,000人超・売上€4.5億超の約11,000社に対してScope3の重要カテゴリ開示義務(ESRS E1)
- カリフォルニア州SB 253:売上$10億超の企業はScope1/2開示(2026年8月10日〜)、Scope3は2027年から
- SEC気候規則:現在停止中だが大手Fortune 500の多くが準備を継続
実践アプローチ:「廃棄した設備の行き先」をサステナビリティ報告に組み込む
- 資産ライフサイクルの追跡:退役設備ごとに「再配置」「再販」「スクラップ」「廃棄」の4分類で記録
- 回避排出量の数値化:再配置・再販した設備1件ごとに「新規製造回避CO2量」を算定してScope3削減として計上
- CFOとCSO の共同管理:財務上の「余剰資産回収額」とESG上の「回避排出量」を同一シートで管理
得られた結果
- 「廃棄する設備すべてが回避排出量である」という発想転換により、Scope3のカテゴリ1・2・11・12に対して測定可能な削減実績が積み上げられる
- CSRD・SB253・SEC規則の三重収束に対して、追加コストなしでScope3削減ストーリーを構築できる
他社が参考にすべき点
中堅〜大手製造業・物流業の環境・CFO担当者向け:
- IR部門をScope3削減の「隠れた戦力」として位置づけ直す——余剰資産の売却・再利用は財務回収の話だけではなく、GHGプロトコル上の削減実績としてCSRD/SBT報告書に記載できる。専任のIR担当者がいる企業はすぐに連携できる。
- 「設備廃棄レコード」をサステナビリティデータに統合する——現状は財務系とESG系が別管理になっていることが多い。2027年のSB253 Scope3提出期限までに、退役設備台帳とGHG管理ツールを統合した仕組みを構築することが急務。
- CSRD ESRS E1の「重要Scope3カテゴリ」にカテゴリ1・12を含める判断根拠としてIR実績を使う——IRで削減した量を「管理可能・測定可能」として示せれば、重要性評価での開示対象選定に影響を与えられる。