やったこと

アシックス株式会社は、スポーツ用品メーカーとして世界初のSBT認定を取得し、全排出量の97%を占めるScope3(特にカテゴリ1:購入した製品・サービス)削減に向けて、サプライヤーへの取引要件に脱炭素の取り組みを組み込む戦略を実施した。

具体的な手順・工夫

Scope3構造の把握

  • アシックスの排出量構造:Scope3が全体の97%(2017年度SBT成果報告より)
  • カテゴリ1(外部製造委託)が最大の排出源
  • カテゴリ1削減にはサプライヤー自身のCO2削減が必須

サプライヤー要件化の5項目

アシックスは以下5項目をTier1サプライヤー(主にシューズ製造委託先)への取引要件として設定:

  1. 再生可能エネルギーへの転換目標の設定・達成
  2. CO2排出量の測定・報告体制の整備
  3. 排出削減計画の策定と実施
  4. エネルギー効率改善の実施
  5. サプライチェーン下流(Tier2)への働きかけ

移行期間設計(既存 vs 新規で分けた導入手順)

既存サプライヤー・工場

  • 移行期間中は「調達加点要素」として扱い、要件対応をエンゲージメント支援
  • 移行期間終了後に「正式調達要件」として義務化

新規サプライヤー・工場

  • 最初から5要件を考慮した選定基準に組み込む

Tier2への展開方法

  • Tier1に対して:「Tier2サプライヤーへの働きかけを行ってもらう」ことを要請
  • アシックスが直接コミュニケーション可能なTier2については:直接アプローチ
  • その他Tier2は:Tier1経由で間接エンゲージメント

得られた結果

  • Scope3削減の進捗が「調達要件」として数値管理可能な形に制度化された
  • SBT目標達成に向けたサプライチェーン全体の脱炭素エンゲージメントの枠組みが確立

他社が参考にすべき点

製造業・商品ブランド企業の調達・サプライチェーン担当向け:

  1. 「加点要素 → 義務要件」の2段階移行が既存サプライヤーとの関係維持の鍵——最初から義務化すると既存サプライヤーが離脱するリスクがある。移行期間中にエンゲージメント支援を行いながら徐々に義務化する設計が現実的。
  2. 新規サプライヤーの要件設定は「最初から」が原則——移行期間の設定コストをかけずに済み、長期的にScope3削減効果が高い。新規調達・サプライヤー選定フローにCO2要件を初期段階で組み込む。
  3. Tier2以下への展開はTier1経由が現実的——すべてのTier2に直接アプローチするのは工数が膨大。アシックスの「Tier1に対してTier2への働きかけを要請」という設計は、スケール可能なScope3カテゴリ1削減アプローチとして参考になる。