やったこと
株式会社アバントのコラムは、Scope3算定における1次データ(実測値)と2次データ(業界平均・外部DB)の使い分けと、限られたリソースで最大効果を上げるための優先順位付けロジックを解説した。GHGプロトコル Scope3 Standardに基づき、全部門・全業種に適用可能な実務手順を提示している。
具体的な手順・工夫
1次データと2次データの使い分け原則
1次データ(サプライヤー実測値)のメリット:
- サプライヤーの削減努力(再エネ導入・製造プロセス改善)が数値に直接反映される
- PDCAサイクルが機能する——削減活動の成果を定量追跡できる
- サプライヤー間での排出量比較・選定評価が可能
1次データのデメリット:
- 中小サプライヤーではデータ収集体制が未整備のケースが多い
- データ品質・算定前提の信頼性評価が困難
2次データの使い方:
- 初期スクリーニング(全体像把握)には2次データを使う
- 排出量への影響が全体の1%未満の活動は2次データのまま管理で十分
1次データ収集の優先順位付け(GHGプロトコル推奨3基準)
基準1:削減インパクトの大きさ
- 主力製品・主要調達品目が売上70%を占めるなら、そのサプライチェーンから優先着手
- 削減目標達成に最も寄与する製品・サービスから始める
基準2:GHG排出量の多いカテゴリ
- 初期スクリーニング(2次データ)でScope3全体を算定→多排出カテゴリを特定
- カテゴリ1(購入した製品・サービス)が過半を占める製造業では、主要品目の1次データ収集が合理的
基準3:データ入手の実現可能性
- 環境データ管理システム導入済みの大手サプライヤーから着手
- 協力的・体制の整ったサプライヤーと連携→段階的に対象を拡大
初期スクリーニングの手順(実務的4ステップ)
- 2次データで全Scope3カテゴリを概算——多排出カテゴリを特定
- 排出量シェア1%未満の活動を除外——2次データのまま固定管理
- 残りの重要カテゴリを3基準で優先順位付け
- 優先度上位のカテゴリ・サプライヤーから1次データ収集を開始
得られた結果
- 「全部1次データで揃える」という非現実的な完璧主義を避け、投資対効果の高い箇所に集中することでScope3算定精度を段階的に高められる
- GHGプロトコルの3基準を使えば「なぜこのサプライヤーから着手するか」を社内・外部に説明できる根拠が生まれる
他社が参考にすべき点
サステナビリティ・環境・調達担当者向け(特に製造業・商品企業):
- 「初期スクリーニング → 絞り込み → 1次データ収集」という3フェーズ設計を最初に合意する——2次データによる全体像把握を飛ばして1次データ収集に突入すると、工数が膨大になり挫折しやすい。初期スクリーニングこそが最初の投資対効果が高い作業。
- 削減インパクト基準を最優先にする——サプライヤーへのアクセスしやすさ(基準3)から着手すると、排出量的にマイナーなサプライヤーに工数を使ってしまう。目標達成への寄与が最大の品目から逆算する。
- SBT・CSRD対応の期限から逆算してデータ収集ロードマップを作る——2027年以降の規制対応(SB253 Scope3開示等)の期限を起点に、どの年度までにカテゴリ1の何%を1次データ化するか計画を立てる。