やったこと
NEDO補助事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」において、三井化学株式会社と東レ株式会社が共同で、フィルム包装製造のラミネーション工程を対象とした業界初のEB(電子線)硬化型接着剤とインラインプロセスを開発した。ラミネーション工程の年間CO2排出量を約61%削減した。
具体的な手順・工夫
課題:溶剤系接着剤がラミネーション工程のCO2の主因
フィルム包装材(食品包装・詰め替えパウチ等)の製造工程別CO2排出量内訳:
- フィルム工程:52%
- インク・印刷工程:32%
- ラミネーション工程:16%(1台あたり年間約2,127t-CO2)
従来のラミネーション工程の課題:
- 溶剤系2液熱硬化接着剤を使用 → 溶剤の加熱乾燥・燃焼処理で多量電力消費
- 接着剤がラミネーション直後に完全硬化しない → 加温処理(熱養生:40℃×5日間)が必要
- 結果:電力消費増大・製造時間の長期化・VOC(揮発性有機溶剤)排出
技術開発:三井化学のウレタン接着剤技術 × 東レのEB硬化型印刷技術の融合
開発した新技術:
- EB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術をウレタン接着剤に応用
- 三井化学のウレタン接着剤技術に東レのEB硬化制御技術を組み合わせ
- 接着性能を大幅向上させた無溶剤EB硬化型接着剤を実現
- インライン化(ラミネーション+EB照射を1ライン内で完結)
- 溶剤乾燥工程が不要になりエネルギー消費を大幅削減
- 加温処理の時間短縮・低温化が可能になった
新技術と従来技術の比較
| 項目 | 従来(溶剤系熱硬化) | 従来(無溶剤系熱硬化) | 新技術(EB硬化無溶剤系) |
|---|---|---|---|
| 硬化性(養生時間) | ✕(5日必要) | ✕(より長い) | ◎ |
| 加工性 | ○ | ✕ | ○ |
| 省エネ性 | ✕ | ○ | ○ |
| VOC削減 | ✕ | ○ | ○ |
| 残留溶剤 | ✕ | ○ | ○ |
達成した削減効果
- 年間消費電力削減:309万kWh
- CO2削減量:1,290 t-CO2/年
- 削減率:約61%(ラミネーター1台あたり、2,127t → 837t相当)
- 副次効果:VOCフリー化にも貢献(業界初の次世代ラミネーションプロセス)
今後の展開
- 印刷からラミネーションまでを含む「フィルム包装製造工程全体」の省エネ化へ拡大
- 環境対応(CO2削減)と生産性向上の両立を目指す
得られた結果
- フィルム包装製造の主要省エネ課題だったラミネーション工程で業界初の溶剤レス×インライン化を実現
- 年間1,290 t-CO2・309万kWhの削減を確認し、業界全体の横展開が期待される
他社が参考にすべき点
製造プロセスの脱炭素化・省エネ技術開発担当(化学・包装・素材業)向け:
- 「工程別CO2排出量の内訳分析」から着手してホットスポットを特定する——フィルム包装のラミネーション工程(全体の16%)という見落とされがちな領域で61%削減を達成した。製造工程全体のCO2分布を把握し、「電力消費と化学的プロセスが絡む工程」を重点候補にする。
- 異業種・異技術の融合がブレークスルーを生む——三井化学(接着剤)×東レ(印刷技術)という異なるコア技術の組み合わせが業界初の開発を実現した。単独開発で行き詰まった場合は共同開発・技術ライセンス活用を検討する。
- NEDO補助事業を「実証開発→社会実装」の資金調達に活用する——「省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」はこうした製造プロセス脱炭素化の開発費を補助する。応募要件・採択テーマを確認し、自社の省エネ技術開発と連携できるか探る。