やったこと

Scope1・2の削減が一定程度進んだ企業にとって、次の課題はScope3(サプライチェーン全体)の削減だ。本稿では、排出量の算定済み段階から「実際にサプライヤーと協働して排出係数を下げる」ための実践手順を整理する。グリーン調達(自社の購買行動の工夫)ではなく、サプライヤーエンゲージメント(サプライヤーと一緒に脱炭素を進める仕組みづくり)を主軸に据えた取り組みだ。

具体的な手順・工夫

ステップ1:対象サプライヤーの絞り込み

全サプライヤーに均一に働きかけるのは非現実的。以下の3軸で優先順位を付ける。

  • Scope3への寄与度(購入額・数量・排出インパクト)
  • 自社の影響力(仕様決定権・取引の深さ)
  • 相手の成熟度(GHG算定状況・SBT取り組み状況)

ステップ2:段階的なステージ設定

サプライヤーの算定状況を「Stage 0:未算定 → Stage 1:Scope1/2算定済み → Stage 2:Scope3算定済み → Stage 3:CFP算定済み」と階層化し、段階に応じたエンゲージメント内容を設計する。

ステップ3:サプライヤーアンケートの設計

アンケートで確認すべき項目は「実際のエネルギー使用量」「生産量(製品別)」「Scope1/2/3の算定結果」。二次データ(業界平均・国別平均)から一次データへの移行が削減の本質的な前進につながる。

ステップ4:フォローアップと削減スキームの共同設計

回答したサプライヤーと「二次データから一次データへの切り替え」「再エネ電力導入の支援」「共同調達」などを協議する。削減ポテンシャルとコスト・期間を見積もり、3〜5年のロードマップにまとめる。

ステップ5:社内体制の整備

調達部門・環境部門・経営層を巻き込む部門横断タスクフォースを設置。環境省モデル事業の事例では、調達部門が取引先窓口、環境部門がGHG算定を主導する役割分担が実践的に機能している。

得られた結果

  • CDP 2024年レポートによれば、サプライチェーン排出量は自社排出量の平均26倍に上る
  • 一次データを活用することで、平均的な二次データ係数では捉えきれない「そのサプライヤー固有の排出係数」を使えるようになる
  • SBTiのエンゲージメントターゲット(サプライヤーにも整合した目標設定を求める)への対応が可能になる

他社が参考にすべき点

  • 「活動量を減らす」だけでなく「排出係数そのものを下げる」というアプローチが本質的な削減につながる
  • サプライヤーへのアンケートは一方的なお願いではなく、「同じゴールを共有しながら進め方を一緒につくる」という姿勢が継続的な協働の鍵
  • 内部炭素価格の設定や役員報酬へのKPI組み込みなど、経営直結の仕組みと組み合わせることで推進力が上がる