やったこと

環境省が2025年3月に公表した『1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド(Ver1.0)』の内容を基に、Scope3算定の根本課題である「2次データ依存による削減努力の不可視化」をどう解決するか、実務担当者向けに整理した記事(ScopeX社による解説)。

具体的な手順・工夫

問題の本質:2次データでは削減努力が排出量に現れない

  • 多くの企業がScope3算定に業界平均の排出原単位(2次データ)を使用
  • サプライヤーが再エネ導入・製造工程改善で大幅削減しても、顧客側の算定値は変わらない
  • 「実態と数字の乖離」がサプライヤーの脱炭素インセンティブを破壊している

環境省ガイドラインが提示する解決策

データ種別内容実務適用
製品ベース1次データCFP(ISO 14067)/EPD単位でkg-CO₂/個を把握製造業の調達比較・選定基準に
組織ベース1次データTier1のScope1〜3を売上高・取引量で按分中小取引先が多い企業の現実的スタート

1次データの定義(重要な実務ポイント)

  • 「誰が誰に提供したか」が基準。Tier1から直接受け取ったデータであれば、たとえTier1が2次データを使って算定したものでも「自社にとっての1次データ」として扱われる
  • 現時点でTier2以上まで1次データを遡ることは不要。Tier1との直接データ交換から着手すればよい

国際フレームワークとの整合性

  • WBCSD主導の「Pathfinder Framework(PACT)」との親和性が高く、企業間での製品ベース排出量交換の国際標準として機能
  • 国内では「Green×Digital コンソーシアム」のCO₂可視化フレームワークとも整合し、ITツールや中小企業支援と組み合わせた実装環境が整備中

実装3ステップ

  1. 現状把握: 主要Tier1サプライヤーのリストアップ・排出量影響度評価
  2. データ収集体制構築: 組織ベース1次データ(売上按分)から着手。テンプレート・フォーマット整備
  3. 高精度化: 影響度の高い品目から製品ベースCFPへ移行

得られた結果

  • 再エネ100%で製造された部品と従来エネルギー使用品の違いが、算定値として数字に表れるようになる
  • サプライヤー側に「削減が報われる」明確なインセンティブが生まれる
  • 算定ロジックに脱炭素の推進力そのものを組み込む設計が可能になる

他社が参考にすべき点

  • 製造業・調達部門: まず主要サプライヤー上位20%(排出量で80%を占める)に組織ベース1次データ提供を依頼するのが最初の一手。Excelでの集計から始められる
  • 中小企業・サプライヤー側: 「顧客から1次データを求められる」時代が到来。自社Scope1・2の把握と売上按分フォーマットの整備を今から着手すべき
  • IT投資の判断基準: 1次データ収集・管理を自動化するSaaS(ScopeX等)は、取引先数が50社超になると費用対効果が出やすい